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日教組の「改正」教育基本法への見解
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□■ 日教組「教育基本法」メールマガジン No,68 2006.12.25 ■□

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■ No.68 目次 ■

□ 「改正」教育基本法成立

――――――――――――――――――――――――――――――――
■□ 「改正」教育基本法成立
教育基本法「政府法案」は、12月14日、参議院教育基本法に関する特別委員
会で、続いて15日には参議院本会議において、自民・公明両党による与党の
強行採決で、可決・成立し、22日に施行されました。

日教組は、「『改正』教育基本法成立に関わる日教組中央執行委員会見解」
を22日に発表しました。



〔「改正」教育基本法成立に関わる日教組中央執行委員会見解 〕

2006年12月22日
日本教職員組合 中央執行委員会

はじめに
本日、「改正」教育基本法が、公布・施行された。
政府・与党は、第165回臨時国会において、衆議院、参議院の両院で「何
が何でも今国会で成立ありき」と数の力で強行採決・可決させ、「政府法案」
を成立させるという暴挙に及んだ。
今国会で露呈したのは、タウンミーティングの「やらせ質問」での世論操
作、責任逃れと隠蔽などである。また、「改正」に至る手続きと法案内容が
国民へ十分に説明されていないこと、慎重審議を求める国民の声がきちんと
受け止められていないこと、子どもたちと向き合う現場教職員の考えを聞く
ことがなかったこと、何よりも教育の主体である子どもたちの意見が反映さ
れなかったことなど、「改正」の正当性に欠け、民主主義的でないことを改
めて指摘する。
政治的な思惑と拙速な審議で、21世紀を生きる子どもたちの教育の根幹に
かかわる法律を改悪したことは、極めて重大な問題である。


1.経過の概要
教育基本法「改正」をめぐっては、総理大臣の私的諮問機関である「教育
改革国民会議」が、2000年12月に最終報告「教育を考える17の提言」を
まとめたことから具体的に動き出した。
2001年11月、遠山文科相(当時)は、中教審に「教育振興基本計画の策
定について」「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」を諮
問した。中教審は、2002年11月に「中間報告」にて教育基本法の見直しの
方向をまとめ、2003年3月には「最終報告」を答申した。「最終報告」では、
教育基本法を改正する必要性として「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい
日本人の育成をめざす」ことをあげ、「教育基本振興基本計画の策定」など
の7点の理念・原則を示した。また、新たな規定として「日本の伝統・文化
の尊重」「郷土や国を愛する心」などを盛り込んだ。
2003年5月、与党は、「教育基本法に関する協議会・検討会(04年に『教
育基本法改正に関する協議会・検討会』へ変更)(以下、与党協議会・検討
会)」を設置し、「国を愛(大切に)する心」など、課題について継続的に検
討をすすめた。中間報告(04年6月)、「仮要綱案」(05年5月)を経た後、
一時中断されたものの第164回通常国会への法案提出にむけ、06年1月に再
開された。そして、06年4月13日、「教育基本法に盛り込むべき項目と内容
(最終報告)」をまとめた。
2006年4月28日、政府は、教育基本法「政府法案」を閣議決定し、第164
回通常国会に上程した。5月16日、衆議院本会議での教育基本法「政府法案」
の趣旨説明、24日より衆議院「教育基本法に関する特別委員会(以下、特別
委員会)」で民主党案も含め審議を開始した。第164回通常国会では、のべ
49時間の審議が行われた。
引き続く第165回臨時国会では、9月30日から衆議院「特別委員会」で審
議入りし、9月に誕生した安倍内閣は、教育基本法「改正」を、最重要課題
として位置づけた。
11月15日、教育基本法「政府法案」が、衆議院「特別委員会」において、
与党単独による強行採決によって可決され、続く16日、衆議院本会議で与
党単独による強行採決によって可決された。
参議院では、11月22日に「特別委員会」で審議入りした。子どものいじ
めや未履修問題、タウンミーティングの「やらせ質疑」などについて集中審
議が行われたものの、「政府法案」の内容審議が不十分なまま、12月14日「特
別委員会」で強行採決、15日本会議で強行採決が行われ、教育基本法「政府
法案」は可決・成立した。


2.政府・与党のねらい
政府は、繰り返す答弁で改正の必要性について、青少年の規範意識や道徳
心の低下、あるいは自律心の低下、いじめ、不登校、あるいは中途退学、学
級崩壊、少子高齢化、環境の変化などを主な理由としてあげた。しかし、諸
課題が旧教育基本法のどの規定と関連しているのか、なぜ改正を急ぐのかそ
の理由は、ついに明らかにされなかった。また、3年間で70回に及ぶ与党
検討会の内容も国民には一切明らかにされなかった。
政府は、「政府案2条教育目標は、あらゆる教育機関に含まれる」「全国一
律の規範意識が必要」「第10条家庭教育では、最低限必要な規範意識を努力
義務として規定する」などと答弁し、教育の目標に規定している20もの徳
目は、学校教育だけでなく、社会教育・家庭教育にも及ぶことを示した。ま
た、「国を愛する態度」の評価については、「評価者の愛国心で他人の愛国心
を評価するのは適当ではない」と答弁しつつも、「学習態度は評価できる」
と評価を肯定する見解を示した。さらに、「国は財源には責任を持つが、教
育内容への権限は持たないというのは虫のよい話だ」などと答弁している。
また、政府や地方公共団体による教育振興基本計画や施策の策定は、さら
に政府主導で教育政策がすすめられることとなる。これらのことは、国があ
らゆる教育の場をコントロールする「国家統制」の構図であり、地方分権の
流れにも逆行する。
一方で、安倍首相の諮問機関である「教育再生会議」では、規制緩和、市
場原理・競争主義を教育へ持ち込む教育バウチャー制度、学校選択制の導入
などが検討されている。これらの政策が導入されれば、学校のランクづけが
なされ、評価による予算配分がすすみ、教育の機会均等が保障されなくなる
ことも予想される。また、学習指導要領の改訂、全国一斉学力調査、教員免
許の更新制、学校の外部評価など、成果主義の観点からすべての教育に数値
目標、評価を入れようと検討されている。
教育関連32法令が改定されれば、学校現場に具体的な形で盛り込まれ、
価値の一元化、強制へとつながることが予想される。現在の教育制度、内容
が「国に有益な人材育成」へ大きくシフトし、学校・子ども・教職員を数値
目標による国の管理、権限が強化されることは明白である。「国家のための
教育」へと公教育を根本から大きく変え、中央集権と競争原理をもとに、政
治権力が教育内容にまで踏み込み、学校現場に混乱をもたらすものである。
教育基本法「改正」と「教育改革」は、日本国憲法と切り離されて論議さ
れてきた。しかし、政府・与党は憲法「改正」についても「5年以内の改正
をめざす」ことを表明している。教育基本法「改正」の背後にあるものは、
日本国憲法改悪であると言える。


3.日教組のとりくみ
日教組は、この間、「『教育基本法を読み生かす』運動を継続する。教育基
本法の改悪に反対し、国民的合意形成をめざす。また、憲法・教育基本法に
もとづく教育実践の蓄積をはかっていく」ことを確認してきた。そして、子
どもの権利条約採択日(11月20日)を節目とした教育改革全国キャンペー
ンのとりくみをはじめ、地域・職場では「5万箇所対話集会」を通年的にと
りくんできた。
2006年4月、第164回通常国会に教育基本法「改正」法案が国会へ上程さ
れた事態を踏まえ、「教育の危機宣言」を発して、組織の総力を結集した行
動を展開することを確認した。そして、衆参両院に「教育基本法調査会」を
設置し慎重に審議する必要があること、教育条件整備をすすめるための財源
措置の伴う法整備を行うことが急務であるとして、全国で改悪反対のとりく
みを展開してきた。「教育基本法調査会の設置に関する請願」署名は235
万筆を超え、連合、平和フォーラムなど、多くの働くなかまや市民からも慎
重審議を求める声が広がった。

世論調査、新聞各紙社説でも、タウンミーティング「やらせ質問」、政治
主導の教育基本法「改正」への疑問、審議のやり直しの主張、慎重審議を求
める国民の声が大半だった。「拙速な採決をすべきではない」「今の国会にこ
だわらずに時間をかけて議論すべき」という意見が多く、慎重審議を求める
国民の声が確実に高まった。
日教組及び各単組では、教育基本法問題を広く国民に訴えるため意見広告、
ポスター掲示、ラジオCM等の広報活動や全国キャラバン行動、集会、全戸
ビラ配布行動など、教育基本法改悪反対のとりくみが継続・強化された。各
地のキャラバン行動は地元新聞でも取り上げられるなど世論を盛り上げる
効果をもたらした。また、衆議院段階では全国から結集した組合員による国
会前座り込み行動で「政府法案」の廃案を訴えた。
広範な人々との連帯した運動では、教育基本法改悪ストップ!実行委員会
に参画し、教育基本法改悪反対・「政府法案」の廃案を訴えるアピール行動
や集会の開催にとりくんだ。
日教組は、中央・地方における諸集会を開催し、議員要請行動、国会請願
行動など、日政連議員と連携して院内外の一体的なとりくみを展開してきた。
特に、第164回通常国会、第165回臨時国会での法案の審議状況から、10
月26日に「非常事態宣言」を発するとともに、組織の総力をあげ「教育基
本法改革阻止!『政府法案』の廃案」のとりくみを強化した。この間、開催
した緊急中央行動には、全国からのべ8万人組合員が結集した。衆議院の山
場10月26日には8500人、さらに12月8日、参議院「特別委員会」での強
行採決が危ぶまれる中、組合員・平和フォーラム・日退教・退女教など総勢
12000人が日比谷野外音楽堂に結集し、教育基本法「政府法案」の廃案
を求めて、緊急集会・国会請願デモを行った。


4.成果と課題
日教組は、学校や地域において、旧教育基本法の理念を生かし、人権・同
和教育、ジェンダーの視点に立った教育、国際連帯の教育、インクルーシヴ
教育など人権保障、共生・共学の視点で教育実践をすすめてきた。これらは、
子どもの権利条約や日本国憲法の理念を具体化していくための重要な教育
実践の蓄積である。
日教組は、全組合員による組織の総力をあげて教育基本法改悪反対のとり
くみを展開し、これらのたたかいを通じて、改めて日教組の組織が一丸とな
ったことが確認できた。また、数多くの学習会や運動を通じて、政府・与党
の政治的意図を見破り共有できた。さらに、組織内だけではなく、多くの市
民団体・個人とつながり子どもたちを守るネットワークづくりをすすめるこ
とができた。これらの成果は、今後の教育運動や労働運動へ生かすべき財産
である。
しかし、与党の数の圧倒的な状況下ではあるものの、国会で教育基本法改
悪を阻止できなかったことは、政治力の強化など、今後の運動の課題として
残った。

5.今後のとりくみの方向
私たちは、教育基本法を読み生かす運動、教育基本法改悪反対の運動を通
じて、地域の保護者、広範な人々とつながった。これらの連帯の輪をさらに、
日常的なものとし、「ひらかれた学校」、地域に根ざした学校をめざし、「現
場からの教育改革」をより一層すすめていくことが重要である。
今後、教育基本法「改正」を受けた、学校教育法など教育関連32法令案
が次期国会へ上程されることが予想される。それらの法令案に対するとりく
みを強化することが必要である。また、「教育再生会議」は、07年1月には
第1次報告として、学力向上策として「教育内容の充実、授業時間の増加」
などをまとめている。
日教組は、教育の国家統制・権限強化につながる動きを注視し、すべての
子どもたちの教育条件整備・充実、教育の機会均等の保障へむけたとりくみ
を強化する。
日教組は、戦争への反省から平和・人権・民主主義の確立にむけ、多くの
仲間と結集し、今日まで運動を続けてきた。
子どもたちや保護者と向き合い、教職員の協力・協働のもと育んできた平
和・人権・環境・共生の教育に自信と誇りをもち、国際的な教育改革の方向
である子どもの権利条約と日本国憲法の精神を生かし、地域や学校で自主
的・主体的な教育活動をつくるとりくみをすすめていく。



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発行 日本教職員組合 教文局
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