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共謀罪の行方に関心を寄せるすべての方へ

共謀罪・与党再修正案ここが問題だ!  再修正前の与党案のまま火曜日には強行採決される可能性あり

海渡 雄一(弁護士)

 与党は5月12日午前の衆院法務委員会理事会で、共謀罪について、与党修 正案をさらに再修正することを提案しました。

 この与党再修正案は、まだ国会に提案されたものではなく、民主党に提示さ れただけのものです。与党は12日の理事会で、16日の火曜日の衆院法務委 員会で改正案を採決することを提案しています。自民党の西川理事は「協議が 整わない場合、当初の与党修正案に戻る可能性がある」としており、火曜日に は、もともとの与党案で強行採決される可能性もあります。

 保坂展人議員のブログ
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/7e132adeda9c8b3d5b2276fe6092b9ff によると「昼、複数の記者やジャーナリストから「16日強行採決」という情報 が流れてきた。与党側から「採決」提案があったのは事実だが、野党側は拒否 していて、結論は出ていない。16日は午前中は参議院法務委員会で問題のある 入管法審議が行われ、午後1時からの衆議院本会議で「教育基本法改正案」が 趣旨説明され、私も本会議場で質問に立つ。本日の衆議院法務委員会理事会で 決まった次回審議は、16日の午後3時30分から5時30分までの2時間(野党のみ) である。本会議などへの波及をさけるため不正常な採決(強行採決)は、夕刻が 多い。」 とされていて、16日の夕方が非常に危なくなってきました。4月28日、5 月9日、5月12日と与党側がセットした採決の日程を三度にわたって延ばし てきました。今日の午前中にはTBS,NHK討論、テレ朝サンデープロジェ クトが共謀罪を取り上げました。与党は盛り上がり続ける反対の世論にどのよ うに応えるのでしょうか。共謀罪の行方はまさに正念場にさしかかっている。

1 与党再修正案の内容                             1)再修正の箇所の第1は、法の適用される団体の範囲について、「団体の 活動として」を「組織的な犯罪集団の活動として」に修正しています。しか し、組織的な犯罪集団の定義としては、従来の案と同一の「その共同の目的が 犯罪を実行することにある団体」との定義を変えていません。

2)第2に、犯罪の「合意」に加えて処罰条件として「犯罪の実行に資す る行為が行われた」ことを必要としていた点を「犯罪の実行に必要な準備その 他の行為が行われた」ことを必要とするものと修正しました。

 3)第3に、「憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限してはならな い」「労働組合その他の団体の正当な活動を制限することがあってはならな い」との文言を加えました。

2 重要な点が手つかずで残されている

 まず最初に指摘しなければならないのは、民主党が提案している修正の中で 無視されてしまった点があることです。

 1)重大犯罪の範囲はもっと限定できる
 与党案では対象とされる犯罪が、政府案の「4年以上の懲役・禁固」のまま 変わっておらず619の犯罪が対象となっています。民主党は対象犯罪があま りにも多すぎるして、「5年超の懲役・禁固」に限定し、これを300余りに 限定していますが、この重要な提案を与党再修正案は全く取り入れていません。
 実は条約の適用対象とされる重大犯罪の範囲はこの条約の中でも最も議論が 集中した条項の一つでした。我が国の刑罰法規の法定刑は極めて幅が広く定め られています。条約の解釈として、国内法で刑期の長期が4年と定められてい ても、実際の言い渡し刑では1−2年の刑にしか処せられていないような犯罪 が、条約の定める重大犯罪に当たるかも疑問です。
 実際には、今回の法案が対象としている犯罪の多くは、罰金か短期の自由刑 の対象としかされていないものです。1999年に組織的犯罪処罰法が立法化 された際に、150あまりの、組織犯罪に関連性があると考えられる重要な犯 罪を網羅して犯罪収益収受の罪の前提犯罪が決定されました。これが現在の組 織的犯罪処罰法の別表です。
 これを見直さなければならないような、国内的な必要性も指摘されていません。
 日本政府は、この国連条約の審議過程においても、重大犯罪を長期4年の刑 期をメルクマールに決めることに強く反対しました。同じような反対は多くの 国からも寄せられていました。このことは、第5回の会期に配布された条約案 の2条bisの注に明らかです(A/AC.254/4/Rev.3 p5 note 19)。この時点の案 には、各国はその法規の犯罪に関する定義を参照できるという規定が存在しま した。また、長期の刑期だけで重大犯罪を定義することには、各国の刑罰制度 の違いから実行に困難があるという意見が明記されているのです。これはまさ に日本政府などの意見でした。また、他の提案では、犯罪の重要性は、刑期だ けでなく、国内法でどのように性格付けされているかも考慮すべきだとされて います。
 このような、条約の審議過程から見れば、日本の1999年組織犯罪処罰法 別表が既に、この条約の求めている重要犯罪を網羅しているとして、この犯罪 リストを今回の改正に当たって変更しないという選択も選択肢として十分あり 得ることです。
 我が国の刑罰法規の法定刑が幅広いことを根拠に重大犯罪の定義と共謀罪、 司法妨害、犯罪収益収受の3つの犯罪の適用範囲について、条約の留保ないし は解釈宣言を行い、これを既存の組織犯罪処罰法の範囲と考えるとする(この 場合適用犯罪は当初の150から犯罪の厳罰化がすすんだため約200程度と なっている)、もしくは民主党の提案するように長期5年超とする(この場合 適用犯罪は300程度)ことは、条約の制定経緯、日本政府のとってきた立場 からも、条約の趣旨目的と両立し、十分に許される選択であると考えます。    2)犯罪の越境的性質を規定することは許される

 民主党案は犯罪の国境を超える性質を要件としたが、与党再修正案はこのよ うな限定をすることは国連条約34条2項の解釈として認められず、条約の留 保をしてもこのような修正は不可能であるとして、提案を拒否しています。
 ウイーン条約法条約19条によれば、条約の趣旨目的を損なわない限り、留 保は可能であるとされています。この条約は34条1項においてこの条約は国 内法の原則に従って国内法化すればよいとされています。「国境を超える重大 な組織犯罪を防止する」という本条約の趣旨目的に照らせば、民主党の主張す るような留保は条約の趣旨目的を損なうものとはいえず、許される選択肢です。

3)密告奨励規定は削除すべき

 共謀罪はまだ犯罪の結果がでていない段階で処罰をするものです。犯罪の実 行を思いとどまっても犯罪として摘発される可能性があり、自首しなければ刑 を減免されないという制度は親しい人を警察に売りわたさなければ罪を逃れら れないということです。このような制度を作ってしまうと、密告を奨励し、国 民を疑心暗鬼に陥らせて、社会的な問題について発言すること自体を萎縮させ る危険性があります。民主党案は自首減免の規定は、死刑又は無期の懲役・禁 固の定められている極めて重大な犯罪の場合を除いてこれを削除することとし ました。しかし、与党修正案は「長期5年以上の刑が定められている罪に係 る」ものに限定したとするが、この場合の対象犯罪はやはり600を超えてお り、減る犯罪はわずか10程度で、限定となっていません。

3 与党再修正案ここが問題だ!

  次に与党が再修正してきた点の一部は評価できますが、まだまだ不十分な ものです。
 1)再修正案の第1点は、組織犯罪集団という言葉が入ったため、前の案に 比較すれば適用対象の団体をある程度絞り込んだように感じられます。しか し、団体の定義そのものはこれまでの与党案と変わっていません。その団体が 犯罪行為を繰り返してきたことは要件とされていません。過去に違法行為を 行った事実のない団体が突然共謀罪の対象とされる危惧はやはり残っていると いえます。

 2)再修正案の第2点の「犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われ た」ことは、「犯罪の実行に資する行為が行われた」ことに比べて、少なくと も犯罪の実行の一環となる行為に範囲が限定されたものといえます。しかし、 「その他の行為」にどのような行為が含まれるのか明確ではありません。恣意 的な運用の余地を残しているといえます。
 また、この要件が犯罪の成立要件とされず、処罰条件とされている点も問題 です。国会答弁では処罰条件がなくても、犯罪の合意だけで逮捕は可能とされ ています。少なくとも「その他の行為」は削除し、これを犯罪の処罰条件では なく成立要件に位置づけるべきです。

 3)再修正案の第3点については、単なる訓示規定にすぎず、当然のことを 記載したものです。気休め以上に効果はありません。労働組合の行為も依然と して取り締まり当局によって「正当」でないと評価されれば対象とされること に変わりはありません。

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以上の通り、次の強行採決の焦点となりそうなのは5月16日の火曜日です が、残念ながら院内の会議室が全部ふさがっており、院内集会は設定できてい ません。17日の水曜日には次の緊急集会が設定されていますので、お知らせ します。呼びかけは超党派国会議員の方々です。

■ ■ 引用はじめ

◆緊急集会◆
時   2006年5月17日 (水)  午後6時半〜 
場所 星陵会館  <千代田区永田町2-16-2  TEL 03−3581−5650 >
      場所は国会裏手の日比谷高校内です。 地下鉄有楽町線、半蔵門線、南北線 永田町駅下車6番出口 徒歩3分 地下鉄千代田線 国会議事堂前駅下車5番出口 徒歩5分 地下鉄南北線 溜池山王駅下車(国会議事堂前駅5番出口)徒歩5分 地下鉄銀座線、丸の内線 赤坂見附駅下車 徒歩7分 発言  超党派国会議員・日弁連・刑事法学者・法律家・文化人・ グリーン ピース・アムネスティ・30日メーデーデモにおける逮捕者(プレカリアート)  ほか

【 呼びかけ人 】
  糸数慶子(無所属・参議院議員)  石井郁子(共産党・衆議院議員) 井上哲士(共産党・参議院議員)   枝野幸男(民主党・衆議院議員・法務委員)    江田五月(民主党・参議院議員・法務委員) 小川敏夫 (民主党・参議院議員)   河村たかし(民主党・衆議院議員・法務委員)   近藤正道(社民党・参議院議員)   千葉景子(民主党・参議院議員・法務委員)   仁比聡平(共産党・参議院議員・法務委員)   平岡秀夫(民主党・衆議院議員・法務委員)  福島みずほ(社民党・参議院議員)     保坂展人(社民党・衆議院議員・法務委員)  松岡 徹(民主党・参議院議員・法務委員)     円より子(民主党・参議院議員)    

問い合わせ先 = 平岡秀夫事務所3508-7091  保坂展人事務所3508-7070   仁比聡平事務所3508-8333

■ ■ ビラの引用終わり

海渡 雄一


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