本文の先頭へ
弾圧は共謀罪のさきどり
Home 検索

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
フリーター・メーデー不当逮捕から見える
共謀罪「団体としての犯罪」「犯罪のための団体」の解釈運用の姿
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 共謀罪の法案で主な争点となっている一つが「団体」の定義だ。

 法案審議の政府答弁では  「2人以上の者が集まり、役割分担がはっきりしていれば」  「団体にあてはまる」  ことが明らかになっている。

 これでは市民団体/住民団体であろうが労働組合であろうが、  いや、報道機関でさえも  複数の人が集まっていれば皆あてはまる可能性が出てしまう。

 この批判に対応するものとして、与党が提案した修正案は次のようなものだ。

「その共同の目的が犯罪を実行することにある団体である場合に限る。」

 この修正で前記のような懸念が本当に払拭されるだろうか?

 全く払拭されないという事実を明らかにする事件が最近起こった。

 フリーターの労働組合がおこなったメーデーの音楽デモ(メーデー実行委員  会主催)への4月30日の逮捕劇である。
 http://mayday2006.jugem.jp/
 http://www.labornetjp.org/Video/ram?file=2006/20060430prec(映像:                          realplayerが必要)

 事前のデモ申請のさいに管轄署は何も問題にしなかったにもかかわらず、  デモの当日になって警視庁の主導で、  トラックから音楽を流す行為が「道路交通法違反」とされた。  音楽を流していたDJが逮捕され、  さらにその逮捕のさいの混乱劇やアドバルーンをもっていたという理由で  2人が「公務執行妨害」で逮捕された。

 この逮捕じたい、ひどい話だが、  その後の展開をみると「共謀罪さきどり状況」というべき  警察−司法のひどい現状がうかびあがってくるのである。

 5月2日、DJは釈放されたが、  他の二人はいまだに代用監獄(警察の留置場)に勾留されている。  裁判所が検察によるもう10日間の勾留の請求をみとめたのである。  最初のDJ逮捕じたいが不当なもので、げんにDJは釈放されている。  その逮捕のさいの混乱を理由にした「公務執行妨害」のほうをそのまま問題に  せずに拘禁を延長してしまうというのだから、いまの裁判所が如何に警察・  検察の言いなりかということを象徴している。  ちなみに、勾留請求の却下率は取り下げを入れても約0.5%。捜索令状の  却下率は1.5%、逮捕状などその他令状の却下率は1%を切っている。
(2004年度)
 http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/3D34BA3E72AA7A33492570590008E7EC.pdf

 その「警察・検察言いなり」の裁判所が、さらに勾留だけでなく、  2人の自宅の家宅捜索の令状を出した。

 3人とも現行犯逮捕である。  どうして家宅捜索の必要があるのか?

 「計画性がある」「組織犯罪の疑いがある」と検察が申し立て、  それを裁判所が認めたと推測するのは容易である。  事実、近年おこった似た事件では検察はこうした申し立てを行っている。

 デモも音楽もたしかに「団体として」「計画」されたものである。  その意味では「計画性」があり、「団体として」行われたものである。  労働組合がメーデーのデモを企画し、音楽を流すことを企画した。  それは労働組合の正当な活動である。  別に犯罪の「共謀」ではない。

 ところが、  その正当な活動であるデモ、音楽の企画が共同して行われたことを理由とし  て、家宅捜索が行われるとなれば、  今の司法の世界において、「団体の正当な活動」と「団体の犯罪行為」との  線引きはどうなっているのか、と疑問を禁じ得ない。

 警察・検察が市民の正当な活動に「犯罪」とレッテルを貼り、  連動して「組織犯罪の疑いあり」と言えば、  裁判所はそのままそれを追認してしまう可能性が高い。

 警察が「デモ、音楽」に「道路交通法違反、公務執行妨害」というレッテル  を上から貼り付けると、  団体の正当な活動が、「団体の犯罪」になってしまう。

 労働組合や住民団体の座り込み、団体交渉(⇒「威力業務妨害」「逮捕監禁」)  報道機関の調査報道(⇒「名誉毀損」)が  同様のレッテル貼りを受ければ共謀罪の対象になる。

 こうなると、団体の方も 「正当な団体」が「犯罪(たとえばデモ、音楽!)を共同の目的とする団体」  にされてしまうのも案外簡単ではないか。

 警察・検察の暴走をチェックすべき裁判所が99%の追認機関だとしたら  歯止めはどこにもないことになる。

 4月30日のフリーター・メーデーへの不当逮捕劇は、  共謀罪をめぐる政府の言い分や与党修正案がまったく信用できないことを  明らかにしている。  さらに、すでに「共謀罪さきどり」状況が進んでいることも示しているので  ある。

 手遅れになる前に、1日も早く社会にこの現実を伝える必要があると言える。  また、マスコミはもちろんのこと、共謀罪を審議中の国会議員もぜひ、  この論点を取り上げてほしい。

////////////////////////////
TOMINAGA Satoru
     富永さとる
MBA in Social Design Studies
(非営利組織とアドボカシー)
////////////////////////////


Created by staff01 and Staff. Last modified on 2006-05-06 11:31:26 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について