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『朝日新聞』の呆れた暴論
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村岡到:呆れた暴論――デモを嫌う民主主義?

 「朝日新聞」にフランスでのCPEに反対するデモとストについて、「楽しく危うい『街頭政治』」なるタイトルの記事が掲載された(富永格、4月2日)。見出しだけでも「危うい」感じを与えるが、まことに見事な意見であった。結論にいわく「デモさん、ストさんは本来はこういう国〔ベラルーシのような独裁国〕のためにいる」。
 肩書きがないのでどういう人か不明であるが、この人は、「民主主義が定着した主要国では例外だろう」と文章を書き始め、「デモさん、ストさん」と茶化す。3月28日にはイギリスで地方公務員の140万人のストが起きたばかりだが、イギリスは「民主主義が定着し」ていないのか、あるいは「主要国」ではないのか。
 「兵舎や宮廷や街頭で国が動かないようにする知恵が、議会制民主主義ではなかったか」などと寝ぼけたことを言っているが、「兵舎や宮廷や街頭」を同等なものと一括する粗雑さには呆れるほかない。この文章の前に「自由な意思表示は民主国家のあかしだ」と書いてあることも引用しておかないと公平さを欠くことになるだろうが、デモやストはその重要な一手段であることは論をまたない。
 フランスの若者のプラカードでは、「Cは失業、Pは不安定、Eは奴隷の頭文字だと批判」されていると、教えられたのはありがたいことだったが、こういう馬鹿げた記事がすかさず掲載されるとは!
 私には、デモもストもめっきり減ってしまったことと、偽メール事件で政治劣化を顕わにした日本の政治とは深く一体のものに思われる。政治について明確な問題意識をもち、意思表示――デモもストも投票も――することがいまほど求められているときはない。

 ついでに、もう一つ。偽メール事件のドジによって党首交代を余儀なくされた民主党の動向をテーマに「民主党どう出直すか」なる見出しで、名古屋大学の後房雄氏が「小選挙区制」を「政権を狙う野党にとって願ってもない土俵」と書いている(「朝日新聞」4月4日)。ありふれた俗論であるが、グラムシを研究していると見られている人の発言だけに看過すべきではないだろう。グラムシが主張する民衆のヘゲモニーは、民意の反映を歪める小選挙区制とうまく接合するものなのであろうか。偽メール事件を見せつけられてもなお民主党に期待を寄せる鈍感さにも、やはり呆れるほかない。
 ではどうしたらよいか、この短文でそこまで踏み込むことはできないが、本格的な、軽薄ではない本物をめざす政治が求められているのは確かである。私はそのために、『もうひとつの世界へ』を創刊したところである。第3号では、フランス総選挙について、グラムシ研究者の松田博さんに分析していただく予定である。

http://www.nn.iij4u.or.jp/~logos/
http://www18.ocn.ne.jp/~logosnet/ 『もうひとつの世界へ』第2号目次あり
へどうぞ!

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