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安全問題に鈍感な国交省官僚に呆れる
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特急たから@千葉です。

東京総行動、霞ヶ関大行動の一環(?)として、国土交通省要請に行ってきました。

参加メンバーは佐高信さん(週刊金曜日発行人)、糟谷さん(週刊金曜日編集部)、佐久間忠夫さん(鉄建公団訴訟原告団)、ビデオプレスのお二方(松原さん、佐々木さん)、三好登さん(国労に人権と民主主義を取り戻す会)など。私も参加しました。
国土交通省側は、安全管理官付課長補佐の川口さん、施設課課長補佐、他2名の計4名が対応しました。課長補佐以外の若手職員2名は筆記役で、応答はもっぱら2人の課長補佐が行いました。

(要請開始 2006年9月15日 17:00)
まず、「菊地さんへの処分を撤回させる会」の松原事務局長から要請書を読み上げ、この間の菊地さんのレール破断告発から処分に至る経過を説明。全員が自己紹介をした後、要請に入りました。要請書はこちら

−−菊地さんへの処分についてどう考えるか。

安全管理官付課長補佐(以下「課長補佐(安)」)「処分問題のような労働問題は我々の所管ではないので厚生労働省か労働基準監督署に行ってほしい」

早くも官僚お得意のセクショナリズム全開。安全問題への危機感からつながって処分に至っているのに、そのような想像力も、自分たちの所管なのだという責任感も全くなし。
私の愛読誌「鉄道ジャーナル」(鉄道趣味雑誌)の最新号に国土交通省安全管理官付の職員が寄稿している、「運輸安全一括法」の解説の中に多少はいいことも書いてあったので、彼らの対応ぶりによっては少し彼らを褒めてやるなどメリハリもつけようと思っていた私ですが、この最初の対応だけでそんな気は消えました。

−−菊地さんの処分については知っているか。

施設課課長補佐(以下「課長補佐(施)」)「そのような事実があったことは聞いている」

−−JR東日本に対して何か対策はしているか。

課長補佐(施)「現在、関係部署に事実関係を問い合わせている」

−−JRのどの部署か。本社か、それとも千葉支社か。

課長補佐(施)「本社の安全を担当する部署。固有名詞は思い出せないが、施設関係の部署である」

−−JR東日本へ指導をする考えは。

課長補佐(安)「鉄道事業者も民間事業者でありますので、私どもとしてもなかなか指導しにくいところがございまして」(→自分たちが民営化しておいて、何言ってんだこのヒト…)

−−これからJR東日本をきちんと指導してもらいたい。

「まずは現在、どのような状況になっているか把握に努めたい」(→今ごろそんなこと言ってるの?)

−−(佐高さん)尼崎事故、羽越線事故とあれだけ多くの方が亡くなっているのに、自分たちのことだという認識もなければJRを指導する気もない。だったら政府は要らないじゃないか。君たちはなんのためにそこにいるんだ!(早くもキレ気味)

(国交省側、沈黙)

−−安全問題についてどう認識しているのか。

課長補佐(安)「ご承知のように、私たちは今年4月から運輸安全一括法を実施しました。改正法では、各鉄道会社に統括安全管理者の選任を義務づけるなどの改正を行いました」

申し訳ないが、私は鉄道ジャーナルの記事でその事実関係は知っている。今日はそんなことを聞きに来たのではなく、あなたたち行政がどうするかを聞きに来ているのだ。

−−(特急たから)もちろん法改正はしないよりしたほうがいいに決まっている。しかし菊地さん処分問題を見ていると、JR各社に“自浄能力”があるとは私にはとうてい思えない。自浄能力のない会社が立ててきた安全対策にお任せし、自分たちは何もしないというのでは安全対策の意味がないと思うが、どうか。

課長補佐(施)「国土交通省としても、各社から出された安全対策の審査はしています」

−−その審査で、問題があれば許可を出さないこともあるということか。

課長補佐(施)「そのような可能性は当然あります」

この回答を、私は「過去において不許可になった例はない」というふうに解釈すると同時に、聞き方がまずかったと少し反省しました。「過去に安全対策が不許可となった実例はあるか」と聞いた方が、より実態が明らかになったのではないかと思います。

−−(三好さん)私たちは難しいことは何も言っていませんよ。ただ、菊地さんへの処分を取り消すようJR東日本を指導してほしいと言っているだけです。菊地さんは処分されるようなことなどしていない。鉄道会社の社員が安全を守るために告発したんだから、本来ならあなたたちから表彰されたっていいくらいですよ。

−−安全のことは現場労働者がもっともよく知っている。今回のこと(レール破断)は会社、社長だって知らなかったはずです。いまはそれを労働者が告発している。でもこのような会社の体質を放置すればやがて労働者が沈黙する。もっともっと事故が起きますよ。

沈黙する国交省幹部。

確かに、黙秘権は憲法で保障された国民の権利。官僚も国民のひとりだから当然その権利はあるが、だからってそれをこんなところで行使しなくたっていいじゃないか。

−−(松原さん)なんだかJRに対して恐れているように見えるが。JRがそんなに怖いのか。

「いえ、そんなことは…」

−−(佐高さん、週刊現代の連載記事〜「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」〜のコピーを示し)JRは法律を守るような会社じゃない。

課長補佐(安)「法律は、当然守らせるべきものです」

私からは、質問を安全問題の各論に移しました。

−−安全問題についていくつか見解を聞きたい。2002年に普通鉄道構造規則、鉄道運転規則等で鉄道事業に関して数値規制が定められていた。カーブの最低半径はいくら以上、カントはいくつからいくつまでという風に数字で全部決まっていた。それを数値規制を全部なくし、外してしまった。私は政府のそのような政策(=規制緩和)が今日のこの事態を招いたと考えているが、どう思うか。

一番右側に座っていた施設課課長補佐に、若干動揺したそぶりが見える。表情がすぐに顔に出て、わかりやすい人だ。

施設課課長補佐「おっしゃるように、技術基準を改正し、性能規定に改めました。各事業者に安全基準を作成してもらい、審査をします。そういう仕組みを作っています」

だからそういうことを聞きに来たんじゃないって。君たち、私を素人だと思っているんだったら、本気出すよ。

−−(特急たから)先ほどから申し上げているように、自浄能力のない会社が自分で作る安全基準など信用できない。先ほど課長補佐(安)から法律は守らせるべきものだという話があったが、自浄能力のない会社に法律を守らせたいと考えるなら、その法律は当然、強制力を持った内容であることが必要だと考える。JRがこの状態である以上、政府がきちんと指導すべきであり、そのためには数値規制を復活させることが最低限、必要だと思う。行政として、法律に強制規定、数値規制を復活させてもらいたい。

国土交通省側、沈黙。

−−国土交通省のホームページに、技術基準に関するパブリック・コメントの内容が出ていたので、寄せられた意見と回答を読ませてもらった。数値規制を復活すべきだとの意見に対し、どの程度のカーブにATSを設置する必要があるか等について基準を今後、示していくとの回答が掲載されていたが、現在、国土交通省内部でそういった具体的規制措置についての案は持っているのか。

課長補佐(施)「そういった(数値的な?)内容は、各社への通達の形で盛り込んでいる」

もっともっと追及したいことはあったのですが、残念ながら時間切れ。

最後に全体を総括して、三好さんが「今後、私たちは引き続きこの問題に取り組んでいくので、私たちとの定期協議の場を設けていただきたい」と述べたのに対し、課長補佐(安)から、「あなた方とだけ特別な定期協議の場を設けるということはできないが、窓口は開けておくので、要請という形でおいでになるのであればいつでも応じる用意がある」との回答を受け、要請を終えました。
(終了 17:50)

国土交通省の役人の対応ぶりは、彼らの姿勢においても回答内容においても全くお話しにならないもので、彼らに安全のことは任せられないとわかったことだけが唯一の収穫というべき酷いものでした。

「いいですか。私たち、今日のあなた方とのこの交渉経過を表に出します。ホームページに載せますよ。載せたらどうなると思いますか?今までJRだけに向かっていた国民、利用者の批判が、あなたたち国土交通省に向かいますよ」。途中、三好さんが思いあまってこんな警告をしなければならないほど、官僚たちは鈍感でした。
自分たちの問題だという認識も、人命に関わる話だということを理解するだけの能力もない。

JRで大事故が続いても、日航でトラブルが相次いでも、マンションから鉄筋が減らされても、ガス器具で中毒が起こっても、エレベーターでドアに挟まれても、プールで排水口に足を吸い込まれても、自分のことじゃないから関係ないと、沈黙と逃避を続ける官僚たち。
自分の命は自分で守るしかない自己責任社会にこの国はなってしまった。しかし、自分の命を守ることができない社会的弱者たちはどうすればいいのだろう。

こんな連中のために税金払うなんて、金をドブに捨てているようなものだと、本当に思いました。
この交渉記録は、そんな日本を少しでも変えていくための、ささやかな抵抗の記録としてお読みいただきたいと思います。


Created by staff01. Last modified on 2006-09-17 22:20:12 Copyright: Default

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