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東京集会・講演の概要
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「WTO/FTAを問う9・9東京集会」でのゲスト趙氏の講演内容は以下の通り。

・日本を回って、WTO/FTAに反対する火種を植え付けたいと思う。

・日本に来て、仙台、いわき、川崎を回って思ったのは、長い間、労働運動、社会運動にかかわってきた人が多いことだ。そのことがうらやましく、また驚いている。

・私が労働運動を始めたのは1980年代始めだった。当時韓国は公衆民衆抗争の後で、チョンドファンが登場した殺伐とした時期だった。

・私は軍隊を除隊して労働現場に入ったが、朝鮮戦争前後に労働運動をしていた多くの人は死んだり、殺されたりしていて、先輩と呼べる人がいなかった。少数の人がサークルを作っていたが、労働運動に生命力はなかった。

・1970年代はじめ、労働基準法を守れと叫んで死んだチョンテイルの抗議の焼身自殺で、労働運動に火がついた。それから10年ほど、繊維労働者、女性、中小の事業所で労働運動が広がっていた。

・私はそれまでは中小で働いていたが、大工場で大衆的な規模で労働運動を作りたかったので起亜自動車に入社した。

・私が労働運動をはじめたときには、労働運動を指導してくれる先輩はいなかった。労働運動を学んだのは、禁じられていた日本の労働運動の書籍だった。私は友人が翻訳したものを読み、労働運動に希望を見いだしていた。

・韓国では、1987年に労働者大闘争があり、そこから本格的な労働運動が始まった。韓国南部の蔚山、馬山、昌原などの大工場の運動が、全労協という組織を経て、現在の民主労総へと続いている。

・労働運動の高まりが続く中、大きな試練に出会った。それが1997年に起きたアジア金融危機で、タイに始って東南アジアを襲い、韓国は国が吹き飛ぶほどの危機だった。

・韓国がIMFの管理下に入った時も、IMFがどのような組織なのかもしらなかった。銀行が倒産し、海外に売却された。そして鉄鋼、発電が民営化された。起亜自動車も、そのようなIMFの構造調整の中で倒産し、悲劇を目の当たりにした。自動車業界では、現代自動車が数千人規模の大規模なリストラを実施し、双竜や三星自動車は海外に売却された。

・起亜と現代は、金属連盟の労働運動の中核だった。労働組合は、リストラに頑強に抵抗した。現代では家族ぐるみで抵抗し、鉄パイプを持って抵抗したが惨敗した。敗北の中で、このグローバル化の時代に、個別企業の戦いでは勝てないと思った。

・IMF後、韓国社会は貧困に陥った。失業者が増え、非正規職が増えた。韓国では大学を卒業しても、一度も就職したことがない人が多い。労働組合で戦い、解雇された人もたくさんいる。私は、どうしてこのようになってしまったのかを考え、勉強をはじめた。

・第二次大戦前にはイギリスが世界を支配していたが、現在、世界を支配しているのは米国だ。そして米国は「ヤクザ」と同じだ。

・韓国でもやくざ映画に人気がある。映画で描かれるやくざ社会は、義理人情の世界だ。しかし現実のやくざの本質は暴力と金だ。大戦後、世界的なやくざが登場した。それが米国である。

・米国は暴力的だ。軍事費も他国を圧倒している。世界的にドルを基軸とする経済体制を作り上げた米国は金になることを何でもする。そのためにさまざまな組織を作った。そのひとつがGATTだ。

・関税は弱い国が産業を保護するためにある。日本も韓国も保護関税で産業を保護し、育成してきた。しかしアメリカは関税が気に入らなかった。そこで米国はシステムを変えるために GATT(関税および貿易に関する一般協定)から「関税」を抜いて、 WTO(世界貿易機構)を作った。

・「自由」貿易をかかげながら、民衆から「自由」を奪う組織がWTOだ。水や人々の暮らしが商品にされる。公共サービスや頭の中の知識(知的財産権)までが、商品として管理される。

・戦争が起きても、公害の中でも、資本家はすべてを商品にして売る。しかし民衆は金がなければ、暮していけなくなってしまった。彼らの言う自由とは、そんな新自由主義グローバリゼーションでの自由だ。

・WTOには多くの国が参加していて、合意が難しい。それで「ヤクザ」は、みんなを集めて開く会議でだめなら、ひとりずつ呼び出して殴り付けて自分の言うことを聞かせようとした。それがFTAだ。

・先ごろ、韓国とチリの間でFTAが結ばれた。農家、特に果樹農家のほとんどが破綻した。チリのぶどうやオレンジが入ってきてだめになった。韓国政府は250万の農家を50万の企業農家にすると言った。 200万の農家はどうなるのか。

・政府は、少し農民が損するかも知れないが、半導体や自動車といった韓国の商品がもっと売れるようになれば、国として儲かると言う。たしかに半導体や自動車は良く売れ、儲かるようになった。しかし儲けているのは企業だ。そして会社は農民に何もしてくれない。政府も農民の破綻には責任を持たない。

・多国籍企業には、国境はない。愛国心もない。徴兵制のある韓国では国民はすべて徴兵されるが、財閥の子供は徴兵の時期になると健康を害する。しかし、徴兵の時期を過ぎると、また健康を取り戻す。医学的に解明されないことが韓国で起きている。

・韓国政府も多国籍企業も、FTAを進めれば経済が発展してGDPもあがり、生活が良くなるという。しかしそうは思わない。

・アメリカは最大の債務国で日本は最大の債権国だという。日本は金持ちの国だと言うが、ここにいる人はどれだけ金をもっているのか。日本の稼ぎは日本には残らず、すべてアメリカに流れる構造になっている。日本の労働者はただ働くだけで、自由貿易の恩恵は戻ってこない。

・日韓FTAが締結されると、どうなるのだろうか。韓国は労働運動が活発で、労働条件は日本よりいい部分がある。たとえば自動車工場は、韓国の方が働きやすく、労働環境がいい。しかし最近、韓国企業で流行っているのはトヨタの見学だ。技術を学びに行くのではなく、トヨタの労働管理を学ぼうとしている。

・日韓FTAで、韓国の労働条件は日本並に引き下げられるだろう。日本の労働者は、賃金が韓国なみに引き下げられるだろう。底辺へと向かう競争が繰り広げられる。

・日韓の民衆は今、新自由主義グローバリゼーションに反対するという新しい地点にいる。われわれを取り巻く環境が変化し、運動もそれに合わせて変わらなければならない。

・よく「韓国の労働運動が活気があるが、日本の労働運動は沈滞している」という。しかしそれはあまり関係ない。多くの戦いの経験や理論が蓄積されている日本の運動と韓国の運動が手を結んだとき、運動はさらに大きなものになる。

・日韓の労働者が団結すべき理由のひとつは、道徳的なものだ。日本や韓国の資本家は、海外でアジア諸国の労働者民衆を搾取している。これは道徳的に許すことはできない。

・もうひとつの理由は、日韓の労働者がアジアに連帯の模範を示すことだ。日韓の民衆が団結すれば、アジアの民衆も団結するだろう。

・「一握りの資本家」という表現がある。だが、国内で「一握りの資本家」を非難してもむなしい。資本はわれわれの力は及ばない海外に出ていく自由があるからだ。日韓の民衆が連帯し、アジアが連帯すれば、彼らは行く先々で大きな非難の声にさらされる。マルクスは「万国の労働者は団結せよ」と言ったが、マルクスの時代はまだその段階ではなかった。だが今こそ、その段階だ。新自由主義グローバリゼーションは万国の労働者の団結を求めているし、団結しなければ勝てない。

・日韓の民衆が団結して、アジア全体にこの団結や連帯が広がり、世界に広がる日が来る。日韓の連帯は、その大きな連帯の第一歩である。

・日韓が団結しなければならない三つ目の理由は、東北アジアの平和のためだ。日米韓の軍事同盟が中国包囲網を敷き、日米は経済的にも軍事的にも中国を包囲しようとしている。中国と日本は緊張関係にある。いずれ戦争の緊張が高まるかも知れない。戦争になれば、戦場にひっぱられるのは、いつも労働者民衆の子供たちだ。われわれは平和のために戦わなければならない。

・米国が朝鮮半島の緊張を高めている。朝鮮半島の緊張は核の脅威だというがそうではない。北朝鮮のミサイルが原発に落ちたらチェルノブイリどころではない。日韓は北朝鮮の核の有無にかかわらず、核の脅威にさらされているのだ。しかしわれわれはだまされている。一番大きな核の脅威はアメリカだ。われわれ労働者民衆は新自由主義グローバリゼーションの時代に、暴力の国、ヤクザの国、アメリカと戦わなければならない。

・銃で殺人を犯した人は、銃を取り上げられて、罰せられる。しかし地球上で核兵器で人を殺したのはアメリカだけだ。米国は核兵器を使い、核を持ち続けながら、他国には核を持つなという。そして各国で戦争を続けている。それなのに脅威だとはいわれない。世界の民衆はこの矛盾した複雑な状況を変えていかなければならない

・今は、チャンスだ。韓国では、1500人から2000人を組織して香港闘争団を組織しようとしている。香港で、日本の闘争団と合流して共に戦いたい。

・釜山ではAPEC会議が開かれるが、会場の島に会議場を作っている。こっそりと島でやるのは、悪だくみをしようとしているからだ。それなら、そんな悪だくみは、アジアの民衆の団結で打破しなければならない

・韓国では釜山のAPECにむけて5000人の実践団を組織した。そして10万人を組織してふた手にわけた、大規模なデモ行進をする予定だ。釜山でも、日本の闘争団と会えることを期待する。

・新自由主義グローバリゼーションの暗澹たる時代に、私は希望を見いだしている。経験と理論のある日本の労働運動・民衆運動と、活気のある韓国の運動が団結すれば、変えることができる。必ず勝利することができる。われわれは共に手を取り合って、アジア、世界の民衆とともに、新しい時代を切り開こう。

整理・文責:安田(ゆ)


Created by Staff. Last modified on 2005-09-10 16:57:27 Copyright: Default

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