アスベスト問題とマスコミ報道 | |
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前回、ILO石綿条約の批准について書きましたが、今回は、今、世間を騒が している石綿(アスベスト)問題について書いてみます。 今回の騒ぎの発端は、6月30日にクボタが尼崎市の旧神崎工場周辺住民に3 名の中皮腫患者が発生しており、見舞金を支払うことを決めたと発表したことで す。労災給付を除いて石綿疾患に罹患した時の社会的救済制度が無いが、石綿製 品を製造してきた企業として社会的責任を果たしたいというのが発表の趣旨です。 私は、前回述べたようにアスベスト規制法制定の運動に取り組んできました。 1990年1月に石綿全国連絡会議として「アスベスト対策の政策提言」を発表 し、アスベスト規制法案を1992年12月に議員立法として国会に提出したが、 審議されることなく廃案になりました。 最近、新聞記者がその当時のことを聞かせてほしいと取材に来きます。政府の 対応の遅れを批判することはよいのですが、誰が法案をつぶそうとしたのかとい う犯人探しのような質問が多くて、当時のことを余り細かなことまで覚えていな い私としては当惑しています。 私は、記者たちにこんな話をしています。 どこの産業で石綿による死者が何人いるという新聞記事ばかり書いているが、 そんなことは昔から分かっていることで、労災認定の記録の後追いに過ぎない。 今回の問題の特徴は、周辺住民や家族に石綿被災者がいることが明らかになった ことだ。なぜクボタが公表したのか。このような情報は、私が運動をしていたと きから医学界の情報としてあった。尼崎の安全衛生センターの地道な取り組みに よってクボタも否定できないところに追い込まれ、新たな社会的救済制度をつく るという方針に転換したからだ。その後の公害被害補償制度の適用を主張した兵 庫県知事の動きをみても、連係プレイが出来上がっている。 政府も、現行法で救済できない被災者の補償制度について検討をはじめた。こ のことはよいことだが、問題は本当によい制度が出来上がるかどうかである。 細田官房長官は、21日の記者会見で「政府の対応に反省点が多い」と政府の 落ち度を認めたが、何をどう反省しているのかが明らかでない。石綿の危険性は 十分知っていた。しかし、政府や石綿協会は「安全に使用すれば問題はない」と いう方針を採っていた。われわれは「安全に使用しても、完全に安全な対策は取 れないのだから、使用禁止に向けて段階的にでもよいから総合的な対策を採るべ きだ」と主張していた。政府の方針が誤っていたのか、安全に使用することの監 督が不十分というのか、反省の中身を追及しないと今後の対処に大きな誤りをす る可能性がある。現に政府が今すすめている石綿の健康被害の調査は、余りにも 短期間に調査したもので、住民被害があったか、家族に被害があったかと各企業 に聞いているが、被害があったという結果はほとんど出てこないだろう。その結 果は29日に発表されるが、この調査結果に基づいて対策が発表される。18年 前の学校の吹きつけアスベストが問題となったときと同じようなずさんな調査を やって、その場しのぎの対策をしようとしていることを何故マスコミは問題にし ないのか。 政府が今までどのような規制をしてきたのか。何を反省しなければならないの かを追求し、政府は今何をしなければならないのかというマスコミ報道がなぜで きないのか。公害としての石綿問題にしてしまうと企業責任はどうなるのか。マ スコミの今の対応は石綿の危険性だけを煽っていては、対策を誤まらせることに なりはしないか。 とまあ、こんな話をしているのです。どのような対策が必要かは7月26日に 石綿対策全国連絡会議が提言を発表していますので、それを参照してください。 伊藤 彰信 Created byStaff. Created on 2005-07-28 11:30:01 / Last modified on 2005-09-05 03:00:34 Copyright: Default |