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停職「出勤」報告5・研究者が抗議声明
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停職「出勤」報告5
4週間が過ぎました。残すところあと1日です。
停職「出勤」のことと西原博史さん(早稲田大)たちが出してくださった「研究 者抗議声明」について朝日朝刊が22日(水)23日(木)に報じました。東京 多摩版の22日の記事は、asahikom掲載のものの半分もありませんでした。新聞 では下線部がカットされていました。

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「君が代」不起立で停職の中学教諭、正門前で連日の抗議
2005年06月21日11時22分
 今春の入学式で「君が代」斉唱時に起立しなかったとして、5月末に停職1カ 月の処分を受けた東京都立川市の中学教諭が連日、朝から夕方まで学校の正門前 で、処分の不当性を訴えている。約120人の研究者も21日、「処分は憲法な どに違反する」とする抗議声明を発表した。
 抗議しているのは、立川市立立川二中の家庭科教諭、根津公子さん(54)。 都教委が教職員に君が代斉唱時の起立を義務づけた03年秋以降、停職処分を受 けた初めてのケース。根津さんを含めて公立学校教職員10人が懲戒処分を受け た。
 今回の停職処分後、根津さんは5月31日からほぼ毎日、「私が起立しなかっ たことで迷惑を受けた人はいますか?」「私はまちがっていると思うことには、 命令でもしたがえないのです」と書いたプラカードを置いて、朝の通学時から夕 方の下校時まで正門前で座り込みを続けている。
 こうした根津さんの行動への反応も様々だ。「子どもがおびえている」という 親からの批判的な反応がある一方、下校時には次々に生徒が駆け寄り、「先生、 頑張って」「うちのおやじも応援しているよ」と励ます姿があった。
 根津さんは話しかけてきた生徒たちに「時代によって常識は変わる。あと何十 年かしたら、この処分もおかしいということになっているかもしれないわよ」と 話す。
 根津さんらの処分に対し、堀尾輝久・東大名誉教授(教育学)や西原博史・早 稲田大教授(憲法学)ら研究者122人が抗議声明を発表。「個々の職員に起立 ・斉唱するよう職務命令を発し、その違反を理由に処分することは憲法と教育基 本法に違反する」とする声明を発表。22日にも都教委を訪ね、手渡すという。
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   今週は、新聞をご覧になって二中の校門前に訪ねていらした方が3人。お一人 は、戦争で友人は皆殺されたというご年配の方。「あの時と今はまったく同じで す。じっとしていられなくて、何ができるわけでもないけれど、来ました」とおっ しゃる。また、ご近所の匿名の方は、「通るたびに涙が出ます」と書かれたメモ にはさんでカンパをくださった。今週は、「今までも声をかけようかと思ってい たんだけれど」と前置きして声をかけてくださるご近所の方が何人もいらっしゃ いました。職場の休憩時間に自転車を走らせてお茶や氷を持ってきてくださる方。 メールや口コミでいらした方、早く行かないと終わってしまうからと駆けつけて くださった方。木、金曜日は一人になることがありませんでした。
 また、メールやお手紙等、たくさんの心ある方からいただきました。多くの人 との出会いがあり、人と人とがつながっていることを実感し、心があったかくな ります。ほかの人が緊急事態に置かれたとき、果たして私は何かできるだろうか ・・・?と思わずにはいられません。人と人がつながって豊かに暮らすことを感 じる毎日でした。
 生徒たちからは常に励まされ続けました。何にも替えがたいことです。金曜日 の帰りには、「あと1日だね!」「来週は来るでしょ?!」「授業待っているよ」 と大勢が言ってくれました。ありがたいことです。
 私は今、扶養家族がいるわけではなく、自分の食べることだけを考えればいい 立場にあることも手伝って、理不尽な命令にはこれからも従わないと決めました。 教員だから公務員だからなおのこと、国民主権と平和主義を謳った日本国憲法や 教育の条理を大事にした教育基本法に違反する、理のない職務命令には従えませ ん。そこで選択した「不起立」であり、停職「出勤」でした。できることなら、 学校内に入れない私の姿から生徒たちが何かを感じ、考えるきっかけにしてくれ たらいいなと思っていました。そう考えての行動、ただそれだけでしたが、この 4週間に私が受けたプレゼントの大きなことと言ったら・・・。みなさん、あり がとうございました。
 最終日の月曜日はプラカードに道行く方、ご近所の方へのお礼を書いて、座り ます。28日からの授業を考えながら。     (6月25日記す)

研究者122人の抗議声明を添付します。

2005年4月の入学式における不起立者に対する処分に抗議する研究者声明

 東京都教育委員会は、2004年中の248名、2005年3月卒業式に関わる52名に加え て、2005年5月27日、2005年の入学式において「国歌斉唱」の際起立しなかった9 名の教員と、「君が代」の伴奏を拒否した1名の教員を処分しました。その中で も、特に、東京都立川市立立川第二中学校教諭根津公子さんに対しては、停職一 ヶ月という非常に重い処分が加えられました。わたしたちは、「国歌斉唱」時に 着席したことを理由に「停職」という非常に厳しい処分が行われたことについて、 正直驚きを禁じ得ません。
 今回の処分は、教員が起立をしないならば、最終的には「免職」にまで至ると いう東京都教育委員会の意志を、明確に示しました。しかし、そもそも、「国歌 斉唱」の際、教員に対して職務命令を出して起立させることは、憲法および教育 基本法に照らして、違法としか考えられません。したがって、違法な職務命令に 法的義務は発生せず、それが繰り返されたからといって、「停職」や「免職」に 至るはずはありません。
 自由で民主的な社会において、教育という営みは、その受け手である子どもが、 自律的に思考する力を獲得するために行われるべきものです。この原理は、憲法 13条の個人の尊重、19条の思想良心の自由、26条の教育を受ける権利などによっ て、子どもに保障されています。教育の目的として「人格の完成」を掲げ、教育 に対する「不当な支配」を禁じる教育基本法は、日本国憲法が想定する自由で民 主的な社会における教育のあり方を具体化したものです。この原理は、旭川学力 テスト最高裁判決において、国は「子どもが自由かつ独立の人格として成長する ことを妨げるような国家的介入」を行うことができないと判示された通りです。  以上のような憲法と教育基本法の理念に照らすならば、学習指導要領に基づい て、「国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導」することには限界があるはずで す。学習指導要領は文部科学省の「告示」であり、旭川事件において最高裁が示 したように「大綱的基準」にすぎません。個々の教員に対して起立・斉唱の職務 命令を発して、その違反に対して戒告・減給・停職・免職という処分を行うこと は、教員を利用することによって、子どもたちを特定の価値に従わせることを目 的とするものであり、日本国憲法および教育基本法に違反し、教育委員会が有す る権限の範囲を著しく逸脱することは明らかです。
 東京都教育委員会は、今回の処分によって、教員と子どもたちに対して、「日 の丸・君が代」に恭順を示さない者は許さないという、強烈なメッセージを発し ました。この処分は、子どもたちを「指導」するために行われているのであり、 すでに子どもたちへの直接の強制は作動しているものと考えられます。
 処分を受けた10人の教員は、このような状況を未然に防ぐために、職をかけて 抵抗を試みたものと考えられます。わたしたちは、このような教員の抵抗は、 「信用失墜行為」どころか、東京都教育委員会の違法行為を社会に訴え、それを 是正するために行われた正当な行為であると高く評価します。
 わたしたち研究者は、「不起立」を貫いた10人の教員の勇気に敬意を表すとと もに、彼らとともに、法を回復するために力を尽くすことが、わたしたちに課さ れた社会的責任であると自覚します。それゆえ、彼らに対して「停職」を含む厳 しい処分を行うことによって、日本国憲法と教育基本法に違反し、あるべき教育 から逸脱を続ける東京都教育委員会の行為に強く抗議し、10.23通達に基づくす べての処分を撤回することを要求します。
2005年6月22日

署名者122名


Created byStaff. Created on 2005-06-26 22:43:08 / Last modified on 2006-09-10 16:22:08 Copyright: Default

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