世界社会フォーラム2002報告会(ATTACジャパン) | |||||||
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ATTACジャパン事務局長の田中徹二さんによると、1999年シアトル反WTO闘争から本格化した世界の反新自由主義グローバリズム運動は、とりわけ第一回世界社会フォーラム(2001年1月)以降に飛躍的に運動を強化・ネットワーク化し、2001年8月の社会運動メキシコ国際会議(ブラジルの労働組合CUT、世界的な農民運動ビアカンペシーナ、国際資本移動規制を求めるATTACフランスなどが中心)では、新自由主義に対抗する「世界的な社会同盟」を建設することが決意された。ところが、9・11とその後の米国などの「テロとの戦い」を名目とした社会運動への締め付けにより、この国際ネットワークに危機が訪れていた。ニューヨーク・マンハッタンで開催された世界経済フォーラムに対抗し、現在の経済政治体制へのオルタナティヴを議論する第二回世界社会フォーラムの成功は、こうした危機を克服し、国際的な反新自由主義の運動の再出発を宣言するものとなった。
さらに重要なのは、「報復戦争」による試練を経て、反新自由主義の運動が反戦・平和運動と結びつかなければならないことが明らかになった。第二回世界社会フォーラムの主要イベントでは、アメリカやイスラエルによる軍事攻撃への批判が相次いだ。そうした議論は、主として第三世界の社会運動とそれと連帯する先進国の運動によってリードされた。中でも、アフガンやパレスチナの草の根団体代表なども参加したアジア反戦会議が発表した、「帝国主義グローバリゼーションと戦争に反対する」声明が注目される。それは、国際資本の利益と大国による国家テロとの関連を現場で起きている紛れもない事実から告発するものであった。
第二回WSFには、労組・NGO・社会団体など約5000団体から、51000人の登録者、35000人の傍聴参加者が、130カ国から参加した(500の新聞社などからジャーナリスト2400人)。西欧と南米が多くを占めた第一回WSFとの比較では、北米からの参加者がかなり増えたこと、そして女性の参加が飛躍的に増えた(なおアジアからの参加はインドを除いて相対的にはまだ少ない)。公式ホームページへのアクセス件数は、一日あたり55万件に上った。
首都圏青年ユニオンに所属する大屋定晴さんは、自ら撮影してきたビデオの報告をした。興味深かったのは、ブラジル・ポルトアレグレ現地の社会+政治運動の独特の強さであった。市長、州知事、そして最も人気のある労働者党大統領候補の演説内容は、資本のグローバル化に対するオルタナティヴを示そうとするもので、新自由主義者が政界を支配する日本では考えられないほどラディカルでかつ人間味のあふれるものであった。驚いたことに、世界社会フォーラムはポルトアレグレ市・リオグランジドスル州の共催で行なわれ、したがって初日の巨大デモの映像には警察の姿は見られなかった。大屋さんによると、80年代初頭から民主化運動の中で、社会的・普遍的な要求を掲げて闘ってきた労働組合(CUT)と労働者党(PT)が、IMF構造調整との闘いの中で財政への人民直接参加や失業者との連帯経済などの革新的プログラムを追及し、それが1990年代以降も広範な人々の支持を獲得した強力な労働運動・労働政治を持続させ、今日の反グローバル運動を中心的に担っているという。資本のグローバル化に対抗する労働運動は世界中にあるが、その具体的方策を実施するために権力自体を自らコントロールしている点で「もうひとつの世界」に一歩近づいている、そんな印象をうけた。
国際金融資本規制に関する会議では、グローバル化する資本の流れが、投機行為や資本逃避・空洞化などを通じて民主的経済政策の余地を狭めていることに対して、国際金融取引課税や海外直接投資課税などのいわゆるCTT(Currency Transactions Tax)を適用し、それを財源とした民主的経済政策や債務問題の克服が議論された。フィンランドの研究者パトマキ氏は、CTT国際条約私案を作成し、新自由主義の推進者であるIMFや米国の影響力が強い国連ではなく、独自のCTT機構を作り上げてCTT加盟国を運動によって増やしていくことが、グローバルな民主化の契機として重要だと主張した。
労働に関する会議では、新自由主義的グローバリゼーションが先進国でも途上国でも失業を増大させ、賃下げ・権利低下を全般的にもたらしてきたことに対して、労働運動が中心となって世界的社会的公正の運動を築く展望が議論された。会議に参加した全国一般東京(FLU)の清水政夫さんによると、南アフリカ中央労働組合(COSATU)やブラジル中央労働組合(CUT)の代表は、労働組合が普遍的な要求をも掲げて世界的・社会的公正を実現する広範な連帯を築くこと、そのためにインフォーマルセクター・非正規労働者の組織化がめざされるべきことを強調した。またフィリピン女性世界行進(WWM)のパネラーは、家庭でも労働市場でも低位に位置づけられてきた女性が、新しい労働組合の潮流を形成しなければ「もうひとつの世界」はあり得ないと主張。これらを踏まえて新しい労働運動潮流の発展に向けた提案が出された。
2003年第三回WSFはブラジル・ポルトアレグレで、2004年第四回WSFはインドで開催される。今年からWSFは地域レベルにも拡張し、2002年10月〜12月にかけて大陸レベルの社会フォーラムを開催する予定だという。日本ではワールドカップ開催の時期にあわせた諸行動が当面の課題となる。 ※WSFで議論されたテーマは実際には非常に多岐にわたっていて、諸提案もかなり具体的なレベルに至っています。以上で紹介できたのはほんの一部にすぎません。雑誌『労働情報』(2002年3月15日号)がWSF特集を載せています。ポルトアレグレ市の直接民主制的財政運営のあり方も分かります。(問い合わせ:03-3837-2542)。 ※WSFに参加してきたATTACジャパンの青年と、日本でWSFをリアルタイムに報道してきたレイバーネット日本の青年が、第二回世界社会フォーラムのドキュメンタリービデオを共同製作することになりました。ビデオ『もうひとつの世界は可能だ〜世界社会フォーラム2002レポート〜』(仮名)を乞うご期待。問い合わせ
文責:JNK(国際部) Created byStaff. Created on 2002-03-17 01:54:23 / Last modified on 2005-09-05 02:58:46 Copyright: Default |