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木下昌明の映画の部屋・76回
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●レイバー映画祭2008
壊れていく社会に抵抗する人々の息づかい

 先日、行き場のない人々が集う広場の公衆トイレで自殺の現場を目撃した。血の海に男が横たわっていた。これも日常光景の一つのように見えたが、グローバル経済が、いまどんな社会をもたらしているのかーニュースは完全失業率が過去最悪と報じている。  そんな折、「いまの世の中どうなっている、どう生きたらいい?」をうたい文句に労働者の祭り「レイバー映画祭」が催される。7本の新作ドキュメンタリーと1本の劇映画「この自由な世界で」(ケン・ローチ監督)がトークを交えて一挙上映される。新作7本は中短編もので、最底辺で<いま>を生きる人々の問題に焦点を当てている。壊れていく社会とそれに抵抗する個人や集団の息づかいも伝わってアクチュアリティーに富む。

●「労働者の夢ーハノイ自由貿易地帯の女性たち」は、日本企業の工場で月6000円で働く現地女性の日常を描いたベトナム人女性監督の作品。

●「サワー・ストロベリーズー知られざる日本の外国人労働者」は、2人のドイツ人が、きつい・汚い・危険な労働に携わる外国人労働者の実態をとらえていて、考えさせる。

●「ソウルを揺るがしたキャンドル」は、韓国の若者が中心になった百万人集会の一部始終と、ネットを使った新しい運動のあり方を探ったもの。一人一人がマイクを手に声を上げる姿に心が打ち震える。

●「人間を取り戻せ!」はビデオプレス制作。ビン工場で働く障害者が人間の尊厳を求めて立ち上がる。回らぬ舌で必死に訴える委員長がいい。

 他に一人で抵抗する「国労バッジははずせない!」(湯本雅典)、大分キヤノンの派遣切り「会社のほうが詐欺だった」(土屋トカチ)、京品ホテルの強制執行「永き一日」(根来祐)など、この不況のなかで起きたーしかしテレビでは断片的にしか見られなかった、ホットなドキュメントばかりで見逃せない。(木下昌明/「サンデー毎日」09年9月20日号)

*写真は「サワー・ストロベリーズ」より。レイバー映画祭は9月26日・全水道会館ホール TEL03-3530-8588


Created bystaff01. Created on 2009-09-11 11:28:04 / Last modified on 2009-09-11 11:34:28 Copyright: Default

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