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スモプの笑って泣いた三百日の記録

熱かったイーランド集会七時間参観記

オ・ドヨプ(作家)/ 2008年04月21日4時38分

この文はイーランド300日文化祭で朗唱されたファン・ソンヨン組合員の 手紙を筆者が再構成して書いた集会参観記です。引用文を除きファン・ソンヨ ン組合員とは関連がないことを明らかにします。

ファン・ソンヨン氏は空色の半袖Tシャツをタンスの奥深くから取り出した。春 というよりは夏だ。まだ4月なのに、春の日差しではなく痛い太陽の光だ。今日 は「イーランド闘争勝利のための300日決意大会および文化祭」の日だ。

ファン・ソンヨン氏は4月19日に大きな円をつけた。ホームエバー・ワールドカッ プ店に行く日だ。仕事をしに行くのではない。もちろんショッピングではない。

ファン・ソンヨン氏は愛称で『スモプティー』と呼ぶ半袖Tシャツを着た。スモ プティーはイーランド闘争の象徴だ。ホームエバー労働者たちが自身の仕事場 で無慈悲に引きずられて行く時に着ていたスモプティー。取り出した瞬間、こ れまでの300日が目がしらをぬらす。

「昨年の夏、この青いスモプティーを脱いだ時は、また着るようになるとは夢 にも思いませんでした。今日タンスからまた取り出して着ることがあまりにも 苦しく恐ろしいです。」

午後3時、地下鉄6号線ワールドカップ競技場駅1番出口の前。学生と労働者が集 まり、イーランド勝利を願う集会の真っ最中だ。スモプティーを着たファン・ ソンヨン氏は深く帽子をかぶり強い太陽の光を遮った。力強く拳を突き上げて 『非正規職撤廃歌』を歌う。

馴染みが薄かった闘争の歌、そして変だとしか思わなかった拳。もうためらう 事もない。今、拳で涙をはね除けて、闘争の歌で力を得る。

イ・コンマム記者

この300日の間、用役警備が暴力を振るう時、盾なってくれたし、警察の放水銃 にうたれてさまよっていた時、しんばり棒になってくれた彼らが組合員をかばっ て席を埋めてくれている。ファン・ソンヨン氏は彼らを『同志』と呼ぶ。自分 より若い学生も、白髪が満ちた老いたタクシー労働者も『同志』と呼ぶ。

不惑の年齢を越え、ファン・ソンヨン氏は同志という言葉が自身の口から出る 言葉とは思いもしたことがなかった。気兼ねなく口から出る時、ファン・ソン ヨン氏もドキッとする。そして胸がときめく。あたかも『愛』という言葉のよ うに、十八の娘に戻って胸がわくわくする。

3時30分。司会者が席から立てという。私たちの仕事場の売り場に入ろうという。

「組合員が仕事場に入るのは正当なことです。顧客に被害を絶対与えません。」

だがすでに警察の車数十台で入り口はがっちりふさがれています。お客さんた ちが迷路のような通路を通り売り場に入った一部の通路まで組合員が近寄って、 盾で遮ります。スローガンも歌もなく、ただ三三五五歩いていったのに。誰か が『私たちも客だ』と叫びます。年をとった組合員が『私たちはみんな覚悟し た。今捕まえて行け』と泣き叫びます。

イ・コンマム記者

三百日が流れたのにどうして心の対立がなかったか。ファン・ソンヨン氏もあ きらめたくなる日があった。

毎日座り込みで忙しい日だった。上の子供が携帯メールを送ってきた。

『ついに電気が切れた』

集会が終わって会議が夜遅くまで続きファン・ソンヨン氏は子供のメールに 答えることができなかった。電気が切れたというのに何か答えられるのか。

深夜12時になり、家の玄関を開いて入った。家は消えてない。闇、漆黒のよう な闇だけだ。遠くに薄い花火が波を打つ。つま先で床をさぐりながら、花火を 探して用心深く足を移した。

上の子の後ろ姿だ。ロウソクの火をつけて何かを熱心に書いている。ファン・ ソンヨン氏は子供を呼ぶことができなかった。人の気配を感じた子供も後ろを 振り返らなかった。

その日の夜、ファン・ソンヨン氏は夜中に枕を濡らしながら、明け方を迎えた。

「私たちの家族が置かれている電気まで切れたこの残酷な現実の中で、今の選 択が果たして本当に正しいのか。今すぐ食べ物がなくて基本的な暮らしもでき ないのに……. こうした家族の苦痛を後にして道端に座って闘争だけを叫ぶ私の 姿が……、真に、真に私達の子供たちのお母さんの姿なのか。」

三十分以上仕事場を入らせてくれと泣き叫んでも、警察の盾はびくともしない。 警察の後ろには白いワイシャツを着た用役警備が威勢良く笑いながらながめて いる。ファン・ソンヨン氏は白いワイシャツを見るだけでもノイローゼにかか る状況になった。あの白い色に三百日間の苦痛を考えれば気が狂わずに生きて いるのが不思議に思うだけだ。

結局、警察に阻まれた組合員とファン・ソンヨン氏が同志と呼ぶ学生と労働者 はまた集会場に戻った。6時からの文化祭のために夕食もとってしばらく休むた めだ。

集会申告を受けた場所で合法的な集会をしているのに警察とイーランド資本は いつも集会に参加した人の顔をとても長い望遠レンズがついたカメラで写して いる。恐怖感を与え、集会を妨害しようとする行為に組合員が抗議をした。 だが聞こうともしない。

イーランド一般労組のキム・ギョンウク委員長が突然マイクをつかんだ。

「静かに文化祭を始めようとしたのに、できません。合法集会を妨害する行為 に厳しく忠告しましょう。」

組合員をまた立ち上がらせます。キム・ギョンウク委員長が走り始めると集会 の参加者も共に走ります。映画館がある出入り口から2階のホームエバー入口に 走って行った。売り場に待機していた警官があたふたと防いで立った。組合員 たちは死力を振り絞り、仕事場に入ろうと警察の盾に突進します。

修羅場になっていよいよ売り場中に十歩入った。

19日、イーランド労働者たちは売り場に入ろうとしたが警察の封鎖で入れなかった。/イ・コンマム記者

ファン・ソンヨン氏は同僚の間に挟まって息もできない状況だ。だが息が止まっ ても、あの盾の向こうの仕事場に入らなければならない。小さい子供の給食費 のためにも。

何日か前だ。小さい子供がファン・ソンヨン氏の電話機に携帯メールを残した。

『給食費を払えず、昼食が食べられなければ運動場の蛇口から水でも飲めばいい。』

はやく給食費をくれという言葉より何十倍もの苦痛でファン・ソンヨン氏の胸を 押さえ付けた。

石ころが自身に向かって、夕立ちのように全身を殴りつけるようだった。

「こんな携帯メールを送ろうと決心して、一文字一文字を押した時、小さい子 供の心がどれほど苦しかったのだろうか、考えるだけでも胸がつぶれそうでし た。三百日間、強い決意で戦ってきたがその瞬間だけは意志だけで克服するの が本当に難しかったです。」

売り場の中に十歩入ったが、組合員の前後から警察がたくさん押し寄せてきた。 結局撤収した。警察とぶつかることが目的ではなかったためだ。

集会場に戻った。今、文化祭の開始時間がいくらも残っていない。売り場進入 の戦いをしてきたことだし、ファン・ソンヨン氏の腹からぐうぐう 音がする。

三百日間、飽きるほど食べてきたのりまき一本が晩ご飯だとファン・ソンヨン 氏は考えた。ところがこれがどういうことか。今日だけはささやかなクッパを 準備したという。司会者が予想より多くの人がきて、足りないかも知れないと いう言葉を残す。

ますます集会場の人々が多くなった。二百人を少し越える人々が、今では五百 に近づいている。

イ・コンマム記者

足りないかも知れないという言葉にイーランド組合員たちは支援に来てくれた 人がみんな食事をすますまで待った。もうもうと湯気のたつクッパを手に持っ て集会場のあちこちに散って座り、さじを忙しく動かす。豚肉を入れたキムチ クッパだ。食べるのを見るとファン・ソンヨン氏の腹の中からはさらに騒がし い信号が送られる。

最後にイーランド組合員たちがご飯を配る所に行った時はクッパはみななくなっ ていた。カップラーメンにご飯のついたしゃもじを入れて渡す。クッパに対す る未練が深くしみる。それでもおいしい。カップラーメンに白い米の飯が混じっ ているのがどこか、ファン・ソンヨン氏はぺろりと空ける。

文化祭はそれこそ感動だ。時間が流れるほど人々が上げ潮のように押し寄せる。 座る席がなく、集会場の外に、地下鉄入口の階段に立っている人もとても多い。 普通、集会が長くなって夜が遅くなるとあちこちにまばらに空席ができるのだ が、今日は正反対だ。ファン・ソンヨン氏はこれまでの苦痛が皆飛んで行って 力がぐんぐんわき上がる。

「お母さん電気切れた10日間、ロウソクの火の下で勉強をしたので集中できて、 本も十冊も読んだの。」

大きい子供の声のように。

「お母さん給食食べる時、絶対残飯残さないでみな食べる。嫌いなおかずが出 てきても全部たべる。」

小さい子供の話のように。

一銭も受けとらず、音響に歌に踊りに詩まで。そして情熱。みんな『同志』の 愛で文化祭は進められた。

進歩新党のシム・サンジョン議員もきて、民主労働党のホン・ヒドク議員当選 者もきた。サービス連盟の委員長もきた。マイクをつかみ激励した。激励辞が 終わるとすぐ、急いで、他に行った。皆、イーランドの戦いがどれほど重要か を話し、勝利するまで最後まで共に戦うと約束をした。

今日の文化祭は、彼らのほかは演説をしないのがとても良かった。演説がない から、すぐ帰る人もいない。前に出てきて話す人々も有難い同志だが、前に出 ずに八時間、集会で一緒にした彼ら、彼らは本当に本当に有難いと考える。

ファン・ソンヨン氏が出てきて手紙文を読んだ。またスモプティーを取り出し た話から始め、子供たちの話をした。ファン・ソンヨン氏も、これを聞く参加 者たちも、みんな泣かなければならなかった。取材をしながら絶えず守ろうと した記者と集会の間の『距離』がこの瞬間に崩れた。あの涙を写さなければな らないのに、とてもあの涙の前にカメラを突きつけるのが恐ろしかった。

イ・コンマム記者

続いてマイクをとったホン・ユンギョン労組事務長も涙声で話しながら、次の 順序を進行した。人をふき飛ばす放水銃にあたり、仕事場から警察に四肢をつ かまれずるずる引っ張られて行きながら、用役警備に腕力と悪口をくらいなが ら、夏が行って秋、冬、そして春。そして夏服を取り出さなければならないそ の時間の前にこれ以上話す言葉を失った。

涙の海の集会場の上で十五夜の月が黄金色に浮かび上がった。月の光が歓喜の 笑いで、組合員たちの心を撫でてくれる。

涙を流して笑う。笑って涙を流す。文化祭も終わった。三百日の闘争映像が流 れる。泣くことだけしかなければ、この席に残っている人はいないだろう。

午後十時。司会者が最後に周囲の人を抱いてあげようと提案する。

ファン・ソンヨン氏の目に多くの顔がうかぶ。今ファン・ソンヨン氏と同じ席 にある顔もあって、今は違う場所にある顔もある。どこにあろうが非正規職法 の犠牲者、イーランド労働者だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-05-05 18:41:31 / Last modified on 2008-05-05 18:41:32 Copyright: Default

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