本文の先頭へ
韓国:9号線値上げは始まりに過ぎない...総選挙後『民営化』逆風
Home 検索

9号線値上げは始まりに過ぎない...総選挙後『民営化』逆風

9号線値上げ、KTX民営化...『民営化』の悪夢はこれから

ユン・ジヨン記者 2012.04.16 19:12

総選挙が席巻して行った場所には民営化の逆風がまき起こっている。

総選挙が終わって3日後、ソウル市初の民間資本都市鉄道であるソウル・メトロ 9号線(株)は、待っていたとばかりに基本運賃500ウォンの値上げを公告した。 2月25日、バスと地下鉄料金が150ウォン上がってから2か月も経たない。

特に民間投資事業(BOT)方式で建設された地下鉄9号線は、値上げを強く要求し、 地方自治体との神経戦も辞さずすでに『民営化』の弊害が感知されている。

このような状況で国土海洋部は、早ければ今週にも水西発KTX運営権の民間開放 計画を発表し、KTX民営化に拍車がかかりそうだ。それこそこれまでの総選挙政局 で静かだった『民営化』議論が、民生への直撃弾を飛ばし、第2ラウンドに入った 雰囲気だ。

奇襲的運賃値上げ...9号線-ソウル市の鋭い攻防?

9号線は4月14日夜、ウェブサイトと駅内案内で「6月16日から9号線の利用は、 別途運賃を最大500ウォンまで徴収する」と公告した。昨年末の赤字が1820億 ウォンに達するなどの資本蚕食状態で正常な運営が不可能な状況で、運賃値上 げは不可避だという説明だ。

こうした公告は、9号線がソウル市と交渉を行なっている中、ソウル市との協議 なく一方的に掲示されたもので、ソウル市は反発している。ソウル市のユン・ ジュンビョン都市交通本部長は16日、ソウル市庁で記者会見を行って「13日に 公告を不法に付着しないよう行政命令を出したが、9号線株式会社は全く予告な く14日に掲示した」と批判した。

これまでソウル市と9号線は2005年、両者間で締結した実施協約のうち、収益率 や資本調達金利などを合理的な水準に変更する議論を行ってきた。ユン本部長 は、「現在の条件では、収益率や調達金利がとても高く策定された面があり、 ソウル市はそうした部分を調整する意志表示をした」と述べた。特にソウル市 側は、2005年に当時両者間が締結した実施協約が民間事業者などの権限乱用の 口実になったという立場を表明している。

9号線の突然の値上げについてソウル市は、ソウル市との交渉で有利な立場を取 る一種の『戦術』と見ている。9号線が主張する1820億の赤字も理解できないと いう立場だ。ユン本部長は「最低運賃収入保障規定(MRG)があるので赤字が出る 部分はソウル市が財政的に支援しており、昨年だけで292億ウォンを保全した」 とし「料金のために赤字になるのではない。純粋な運営収入はむしろ黒字」と 主張した。

そのためソウル市は最悪の場合、9号線事業者の指定を取り消すこともあると 強く警告している。またユン本部長は「料金引上げを強行する場合、民間投資法 で懲役1年以下、1000万ウォン以下の罰金を賦課するか、行政秩序法で 1000万ウォン以下の過怠料を払わせるかを検討する」と声を高めた。

9号線も強硬な立場でソウル市と対立している。9号線側は「2009年の開通直前、 ソウル市の要請でこれまでの1〜8号線と同じ料金を一時的に適用することにし ただけ」とし「民間事業者が自主的に運賃を決め、徴収できることになっている」 とソウル市との行政訴訟も辞さないという立場だ。

民間資本都市鉄道9号線が『甲』...引きずられるソウル市

地下鉄9号線が単独でソウル市と運賃料で争えるのは、9号線がソウル市初の 民間資本事業方式で運営されているためだ。

ソウル地下鉄1〜8号線は、運営主体はソウル市傘下公企業のソウル・メトロと 都市鉄道公社だ。料金を上げるには、ソウル市議会の意見を聞き、ソウル市長 がソウル市物価対策委員会の議決を経るなど、ソウル市の決定に全的に従わな ければならない構造だ。

だが民間資本都市鉄道の9号線は民間の投資で建設され、金融費用の元利を毎年 返すシステムだ。運賃決定の方式もソウル地下鉄1〜8号線とは違う。地下鉄9号線は 李明博大統領がソウル市長に在任していた2005年、ソウル市と『ソウル地下鉄9号線 民間投資事業実施協約』を結び、運賃料方式を締結した。

9号線側は、当時の実施協約によれば、投資した資本と運営費回収、そして毎年 の物価上昇率を考慮し、民間事業者に運賃自律徴収権を保障したと主張する。 また2009年の開通当時、ソウル市の要請で一時的に1〜8号線水準の運賃を適用 しただけで、ソウル市との協約によれば今年、1850ウォンまでソウル市の同意 なく料金を上げられるという立場だ。

現在ソウル市は、過怠金と事業者取消しなどの警告を送り、9号線と鋭い攻防を 続けているように見える。だが内部の状況と民間資本事業システムを考えると、 9号線は「甲」、ソウル市は「乙」の立場で論争をせざるを得ないというのが 大半の意見だ。

実際にソウル市は、9号線に昨年だけで292億の運営損失保全金を払った。需要 予測による投資社の利益を保障する最低運営収益保障方針によるものだ。これ は、予想収益の最高保全率の90%程度の差額を補償する規模だ。だが9号線側は、 ずっと『赤字』と理由に運賃値上げを予告してきた。

今回の奇襲的な運賃値上げも、ソウル市との協議の過程で出てきたものだった。 ソウル市は、運賃値下げのために強硬な立場を固守しているが、『運賃値上げ』 を除く9号線損失保全方式で悩んでいる。実際にユン本部長は「既に提示された 収益の適正性などを判断し、必要なら料金値上げや運営期間延長検討といった 財政支援方法を見つける計画」とし、ソウル市次元の対策の検討を始めた。9号線 もメディア等を通じ、『運賃を値上げしなくても、赤字保全などの解決策があれば 調整することもできる』という立場を示している。

結局、運賃値上げの議論とは別に、9号線側がソウル市との交渉で如何に多くの パイを持って行くのかの鍵は、今後のソウル市の動きにかかることになった。 ユン本部長が9号線側に「交渉を有利に導くため奇襲的に運賃値上げを公告する などの言論プレイをしている」と批判したのもこうした脈絡だ。

運賃500ウォン値上げが問題? 最初から税金の垂れ流し...
9号線に入る税金、『多国籍企業』のポケットに

問題は、ソウル市が運賃値上げを防いで赤字保存解決策を立てても、あるいは ある程度の運賃値上げを実現しても、結局9号線の赤字保存方式は国民の財布 による臨時方便的な対策にならざるをえないという事実だ。

社会公共研究所のパク・フンス鉄道政策客員研究委員は、「民間資本高速鉄道 事業そのものが民間投資家の収益を保障するために公的資金が必要な形態」 とし「結局どんな形であれ効率性はなく、税金は税金として払う局面なので、 国民の税金ですべてを解決するほかはない状況」と指摘した。

[出処:ソウル・メトロ9号線(株)]

実際に9号線が主張する1820億ウォンの赤字分は、民間資本の利益確保も含んで おり、地方自治体で赤字項目を計算する方式とは明らかに異なる。パク・フンス 研究委員は「9号線のような民間事業の収益構造を見ると、政府が運営する収益 の部分項目とは違い、さらに民間投資家配当項目がある」と説明した。結局、 9号線建設初期、何の収益もない状況で天文学的な投資資金が入り、その後、 短期間の運営で元利と利益を確保する過程が伴い、税金による政府の補助と 運賃値上げは必然的にならざるをえないのだ。

特に9号線の場合、初期の建設から『税金の浪費』が捕捉され続けてきた。運営時 設備策定で、ソウル市は総事業の46.7%の事業費を支出した。地下に連結する線路 と基盤施設費用もソウル市が費用を負担した。半分以上の予算を支払いながら、 民間業者の収益を保障する方式だった。

パク研究委員は「政府は民間資本の高速鉄道を推進していた時、民間の効率と 創意を保障することを大切にするといっていたが、事業資金のほとんどを国民 の税金で払い、その後も民間の収益を保障する費用が国民に転嫁されている」 とし「民間により節約される部分は外注下請による人件費節減だけだが、外国 では効率性評価項目から人件費節減は除いている」と説明した。

そればかりか、9号線に流れる莫大な税金は、結局多国籍企業のポケットに流れ るという現実も絶望的だ。9号線の株主はロテム、マッコーリー韓国インフラ、 新韓銀行、現代建設など14社だ。運営はフランス企業のベオリア社が行う。 ベオリア社は上水道事業で世界1、2位を争う超国籍企業だ。

トップの最大株主はロテムだったが、2008年に2大株主としてマッコーリー韓国 インフラが登板した。マッコーリー韓国インフラは、仁川空港売却推進過程で 売却主体0位と議論された多国籍企業でもある。また、仁川空港高速道路、仁川 大橋、ソウル-春川高速道路、龍仁-ソウル高速道路、牛眠山トンネル、スジョ ン山トンネルなど国内の多くの社会間接資本に大株主や運営者として参加している。 マッコーリーIMM資産運営代表は、李明博大統領の実兄のイ・サンドク議員の 息子、イ・ジヒョン氏といわれる。

9号線運賃値上げは始まりでしかない...
民間資本高速鉄道、KTX民営化など...『民営化』の悪夢はこれから

さらに絶望的なのは、今回の9号線の運賃の議論が、今後、盆唐線をはじめ KTXなどの全国的な鉄道産業で繰り返される現象だという点だ。

[出処:チャムセサン資料写真]

昨年10月28日に開通した新盆唐線も、初の民間提案鉄道事業だ。江南から良才 と板橋を経て、盆唐亭子駅まで18Kmの6区間で運行される。運行料金は10Km運行 の基本料金が1600ウォンで、10Kmを越えると5Kmごとに100ウォンが追加される。 これは一般の地下鉄料金より550ウォン高い金額だ。

新盆唐線が開通した当時、高い運賃に特に世論の関心がなかったのは、9号線と 違い、最低運営収益保障方針を適用しなかったためだ。これによりソウル市か ら赤字補填予算は受け取っていないが、それだけ値上げは容易だ。パク研究委員 は「新盆唐線の値上げの予告は必然的」とし「特に国土部とセヌリ党の政策担当者 は運賃決定権を民間に委譲し、運賃の自律性を与えろと主張しており、問題は 深刻だ」と伝えた。

国土海洋部のKTX民営化計画も速度をつけており、民営化の悪夢は全国に 拡大しそうだ。

財閥特典の議論を憂慮して、総選挙後に民営化の日程を先送りした政府は、 総選挙で事実上勝利したことで足早く民営化作業に着手した状態だ。今月上旬、 クォン・ドヨプ国土部長官は「総選挙直後に公告を先送りしたので入札公告を 出す」とし「民間事業者などの参加要件を含むKTX民営化事業提案書(RFP)公告を 4月末に確定して発表し、遅くとも7月までには最終事業者を選ぶ」と宣戦布告した。

これにより国土部は早ければ今週中にも、2015年開通予定の水西発KTXの運営権 を開放する事業提案書を発表する予定だ。今回の事業提案書には民間資本事業 による値下げ効果を強調するため、値下げ率の条件を2月初め発表した草案より 5%程度高い15%線で策定するようになるものと見られる。

これに対してパク研究委員は「外国の事例で、民営化以後に料金が下がったと ころはない。KTXも初期に象徴的に料金が下がるかもしれないが、時間が経てば 大幅に上がるだろう」とし「特にKTXも9号線と同じ構造だが、全国民的な ネットワークであるKTXを民間事業者に渡すのだから、全国的な問題に拡大 するだろう」と警告した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-04-17 01:08:14 / Last modified on 2012-04-17 01:08:43 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について