韓国:最低賃金5410ウォンは果たして正当か? | |||||||
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最低賃金5410ウォンは果たして正当か?[連続寄稿] (1)生計費を基準に最低賃金を法制化しよう
オム・ジンニョン(全国不安定労働撤廃連帯) 2011.06.01 10:27
最低賃金は交渉の対象ではなく労働者の生計費2012年に適用される最低賃金を決定する最低賃金委員会が本格的に始まろうと している。6月3日には労働界と資本側の要求案が提出され、それを基点として 本格的な交渉に入ることになる。しかし、最低賃金委員会の交渉に大きな期待 をするのは難しい。この10年間に見てきたことは、最低賃金委員会での議論は 労働界と資本のきっ抗した対立の中で、公益委員がある程度の水準で調整する のがほとんどだったからだ。最低賃金委員会の終盤の交渉の時期に会議場外で 集会闘争をして、時々刻々とどれだけ意見が接近したのか、状況はどうかが伝 えられる。そのたびにバサバサと削られて下がって行く労働界の要求案が理解 できないのは、ただ交渉場内外の温度差だけではあるまい。 ▲昨年6月末、最低賃金委員会前の歩道野宿座り込みをした民主労総 最低賃金制度は資本が労働者を雇用し、使用する時には、少なくともこの程度 が支払われなければ『暮せない』という最低の基準を設定する制度だ。また、 ある労働者にとっては、最低賃金が生活の質を直接決め、資本の構造調整と 非正規職の拡大で最低賃金水準の労働者はますます増えている。そのため最低 賃金闘争で何を要求し、何を勝ち取るかは、そのまま資本の侵奪から少なくと も保証されるべき生活の基準をどのように見て、その争奪のために何を要求 するのかを意味する。資本はさらに最『低』賃金にしようとするが、これに対 して最低の暮しを守る闘争が、まさに最低賃金現実化の闘争だ。そのように 労働者の生計をめぐり鋭く拮抗する点が、まさに最低賃金の問題である。 そうした労働者の基本的な生計水準を決める最低賃金が譲歩と妥協の中で決定 されることを、労働者自らが認めてはならない。それでも最低賃金制度は民主 労総の積極的な介入が始まった後も10年間、こうして転落し、今年も同じように 進んでいる。 労働者の賃金は、つまり生計費だという事実、そして最低賃金は、この社会の 労働者の最低の生活の質を決める尺度だという事実、それが交渉で調整され、 譲歩してはならないという事実を確認しなければ、これからの10年も同じように 労働者の生計は最低賃金委員会で比較されるだろう。それなら、今のような 最低賃金委員会は解散するのが当然だ。 最低賃金、『半分』ならいい?最低賃金は、生計費を担保できる水準になるべきで、その生計費を基準に決定 されなければならない。ところが今の労働界の要求案である5410ウォンは単に 全労働者の賃金平均の半分だ。国際的な貧困線という理由でこの基準を使うが、 半分ならば最低の生計ができるという証拠はない。むしろそれも不足だという 根拠はある。 民主労総が今年発表した標準生計費によれば、2011年の1人世帯の標準生計費は 182万8325ウォンだという。時給5410ウォンでは週40時間労働した時、月113万 ウォン程度の給与を受け取るが、この差は何を意味するのか? 標準生計費は、 韓国社会の普遍的な生活水準を示しているが、この『普遍的』と『最低』の差 が民主労総に標準生計費は182万余ウォンで、最低賃金は113万余ウォンならば 良いという合理性を付与したのだろうか? 似たようなことは他にもある。2007年から2008年までの2年間、ソウル地域では 『生活賃金運動企画団』が組まれ、最低賃金闘争の慣性を克服して闘争の内外 縁を拡張するため、『生活賃金』の問題意識を提起して活動したことがある。 当時、労働者自らが要求する適正な生計費と生活賃金はいくらかという調査を したが、その結果、基本的な生活ができる賃金は月295万ウォン、家族の最低の 生計費として303万ウォンを要求していることが明らかになった。実際に韓国の 物価と高い住居費、教育費、各種公共料金などを考えれば、人間らしく暮すた めにはさらに多くの所得が必要なのは事実だ。しかしこの調査の結果に対する ほとんどの反応は、あまり高い金額が現れたということだった。最低賃金闘争 の過程で宣伝して広報するには高すぎる金額だというのだ。 [出処:進歩政治] 最低賃金の現実化を語り、生活賃金が必要だと誰もが言うが、『この程度なら』 いいという考えを、持てる者が持たざる者に与える時のように、私たちも全く 同じように持っているのではないのか。今もそうだ。『5410ウォンなら幸せ』 という言葉の中に、実際に5410ウォンで暮さなければならない労働者の立場は 反映されているのか。結局、生活賃金を語り、最低賃金現実化を口にするが、 大多数にとって最低賃金は最『低』賃金で良いという考えが染み付いているの ではないか。では尋ねよう。『あなたがこの最低賃金闘争で適正だと思う要求 の水準、それについてあなたが引く限界線はどこでしょうか?』 自ら答えられなければ、今私たち自身が持つ最低の陥穽から抜け出してみては どうか? 生計費を基準として最低賃金の決定基準を法制化せよ最低賃金は、全労働者賃金平均の半分ではなく、『生計費』を基準として決定 されなければならない。交渉で要求案をめぐり譲歩し、妥協するのではなく、 人間らしい生活ができる適正な生計費の水準を明らかにして、それを基準として 法制化しなければならない。 これに対して〈全国不安定労働撤廃連帯〉は、最低生計費の概念を基準とする 方案を提出したことがある。具体的に言うと「最低生計費を上回る最低賃金の 法制化」を私たちの代案として、政府との決定基準法制化闘争を展開しなけれ ばならないという提起だ。ただし、現行の最低生計費は非現実的に低く策定さ れている。労働を誘導するという面で、最低生計費はいつも最低賃金よりはる かに低い水準で策定されている。そしてこれほど低い最低生計費が、また最低 賃金を下げる役割をし続けてきた。それでも最低生計費を基準として法制化し ようと提起するのは、次の二つの側面からだ。 まず、これが最低賃金闘争の性格を明確にできるためだ。最低賃金が保障すべ き最低生計を法定最低生計費と連動させることで、最低生計費を争奪する闘争 に、さらに力を集中させようということだ。それなくして最低賃金の引き上げ だけを話せば、国民賃闘はおろか雇用された人の話にしかならない。普遍的な 生活水準と最低限の文化的な生活のための生計費について闘わず、50%を要求案 として投げて交渉で解決しようとしたところで、うまくいくはずがない。 次に、労働者の賃金が生計費だという事実を社会的に再確認することで、最低 賃金闘争の性格をさらにはっきりさせられるからだ。今、労働者の賃金は年俸 体系再編、成果給、職務給導入などで攻撃されている。賃金が労働者の生計費 ではなく、成果や熟練、職務、雇用形態などにより変わるという資本の主張に やられている。これを防ぐのは、労働者の賃金が成果、仕事内容、または熟練 などで変わるのではなく、誰もが社会に必要な労働をしているのだということ、 労働はそれ自体に意味があり価値があるという点、賃金は理由を問わず、暮し ていくために必要な水準でなければならず、他の主観的な要素を介入させて、 低賃金を正当化してはいけないという点を明確にすることから始まる。 ところが金額の高低を離れて、平均賃金の50%という要求は政府資本の賃金改編 の論理を突破できない。「なぜそれだけ受けなければならないのか」という問 いへの返事は、単に「その程度も受け取れれない労働者が多い」からでしかなく、 この中には最低賃金労働者に対し多分に恩恵授与的で同情的な視角が存在する。 このような視角は最低賃金闘争自体を代理闘争-代理交渉にして、わずかなでも 引き上げれば『ファインプレー』という評価を自らに(大多数の未組織労働者に は事実上無責任に)残すだけだ。 [出処:チャムセサン資料写真] 私たちが要求する生計費が最低賃金闘争に含まれるようにもちろんこれは撤廃連帯の問題提起だ。ここから始め、労働者の生計を保障す る最低賃金決定基準の法制化について多様な議論が行われることを希望する。 重要なことは、要求の高低が問題なのではなく、どんな基準であれ最低賃金が 労働者の最低の人間らしい生計を保障する生計費の概念として決定されなけれ ばならないということで、その基準を法制化し、これ以上、最低賃金委員会で 労働者の生計をめぐる譲歩や妥協があってはならないということだ。 ところが今、われわれの最低賃金闘争には『生計費』の話が欠けている。生活 賃金にしなければならないというが、5410ウォンという金額に埋もれ、出てこ ない。5410という数に閉じ込められた人間らしい生活の要求を引き出そう。 適正な生計費はどの程度なのかは、各々違うかもしれない。現在の所得と生活 により、適正な生計についての要求水準もそれぞれ形成されるためだ。違うか ら基準にならないのではなく、生計費の議論を活性化させることが必要だ。 だからまた問う。「あなたが要求する適正な生計費はいくらですか?」という 質問に答えることから最低賃金闘争をもう一度始めなければならない。 翻訳/文責:安田(ゆ)
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