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都知事選で負けたのは生活と労働だった

竹信三恵子(ジャーナリスト)

 都知事選をめぐるさまざまな論議が下火になり、語られることも減りました。小池百合子氏の学歴詐称疑惑や、石丸伸二候補の躍進などが話題になりましたが、それが焦点なのか、と、開票日以来、モヤモヤを抱え続けてきました。そして、モヤモヤの正体は、今回の都知事選での本当の敗者が語られていなかったことだと気づきました。本当の敗者は「生活」と「労働」だったのです。

 東京都では、1年有期の「会計年度任用職員」のスクールカウンセラーが、契約更新の上限とされた5年目の昨年度末で約250人、まとめて契約を打ち切られました。その復職を求める心理職ユニオンが6月に行った都知事候補アンケートで、小池百合子候補は復職を明確に否定しましたが、290万票を得て3選。復職に賛同した蓮舫候補は3位。回答しなかった(つまり全く無関心だった)石丸伸二候補は2位に躍進しました。労働者の利益を代表するはずの「連合東京」は、小池候補の支持に回りました。

 人の生活を支える雇用についての姿勢がこれほどきれいにわかれた選挙はなかったのではないかと思います。だが、それは話題にもなりませんでした。*写真=筆者(2023年の共同テーブルシンポ)

 小池都政について大手メディアでは、大きな失政がない、と報じることが多いようです。でも、小池都政では、コロナ禍で根拠に乏しい「夜の街」攻撃がくりだされ、この業界で働く人々が過酷な体験をしました。この業界には、一人親や東京に単身で出てきた若い女性たちも多く働いていますが、そうした、労働者保護が弱い、社会的に脆弱な人々が標的にされたのです。災害時に為政者がやってはいけないことの一つが社会的弱者の排除です。それができていなかったことになります。東京の防災対策はこれで大丈夫なのでしょうか。

 東京の出生率が全国最低とされています。これに対し都心3区の出生率は高いという論も出ていますが、低所得で結婚も視野に入れられず、子ども生むどころではない都民の「健康で文化的な最低限度の生活」を目指す都政に、なっているのでしょうか。

 次の都知事選に向けて、私たちは、「取りこぼされる都政被害者」のネットワーク化を、いまから始める必要があるのかもしれません。そうしたたくさんの人たちが見える形にできていないことが、生活も労働も(そして人権も)見えない都知事選を生んだようにも思います。それができていれば、選挙の結果はちがっていたでしょう。

 政策論争がないとは、ただ「政策を語らない」ことではありません。それは、「政策の対象になる人々の顔が見えていない」ことなのです。(8月4日・竹信三恵子さんのFBから転載)


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