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根津公子の都教委傍聴記(3/5) : オリンピックに振り回される学校?!
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根津公子の都教委傍聴記(3015.3.5)

オリンピックに振り回される学校?!

 公開議題は≪来年度使用都立高校用附則9条本の採択について≫、報告は≪来年度オリンピック・パラリンピック教育推進校について≫と≪都立高入学者選抜実施状況(経過報告)について≫。非公開議題では校長・副校長の人事異動と校長の任命、それに「教員等の懲戒処分等」が4件だった。

≪来年度使用都立高校用附則9条本の採択について≫

 附則9条本とは文科省検定及び著作教科書以外の教科用図書で、語学や工業、農業科の授業で使用する図書を言う。各高校が選定した附則9条本に対して、「採択権者である都教委が自らの責任と権限において」調査し採択した結果を承認してほしいという議題であった。1194点にのぼる図書についてそれが教科用図書として適切かどうかを教育委員が瞬時に判断できるわけはなく、内容についての質問・意見はなかったが、一括採択。出された質問は、これが有償か無償かという点のみ。

≪来年度オリンピック・パラリンピック教育推進校について≫

 2020年オリンピックを射程に都教委は2010年から「体を鍛える」ことを主要施策にし、子どもたちは体力テストを課せられ、学校の玄関にはオリンピック誘致をアピールする旗の掲揚を校長に強制した。

 そして、東京開催が決まるや、この推進校の指定。推進校は「オリンピック・パラリンピック学習の実践」「国際理解教育」「基礎体力を向上する体育授業等の改善」「オリンピアン・パラリンピアン等との直接的な交流」「日本の伝統的な礼儀・作法やおもてなしの心などの学習」など12項目の内容から複数項目を選択し、創意工夫した取り組みをするのだという。今年度は300校を指定し、箸の使い方を通して「日本の伝統文化を体験する」(小金井三小)、留学生との交流で「おもてなしの心の体験」(翔陽高校)などに取り組んだとのこと。来年度は600校を推進校に指定し、再来年以降は全校(幼・小・中・高・特支)で実施していくという。

 「600校のうち、高校は38校」という数字に、「高校生ほど学んでほしいと思うが、高校が少ないのは、授業時数との関係か。」(山口委員)との質問。高校の校長からの申請がこの数字だったとのことだった。校長たちは、強制されなければこの程度なのか。5年後のことを考えれば、ターゲットは小学生、中学生ということなのかもしれない。

 オリンピック招致の最終プレゼンで「福島原発事故は完全にコントロールできている」と大嘘発言をした安倍首相。その記憶は子どもたちにとっても古くはなく、子どもたちの中にも東京開催のオリンピックをよしとする者ばかりではないはずだ。そういう子どもたちは、どんな気持ちでこの授業を受けさせられているのだろうか。

≪都立高入学者選抜実施状況(経過報告)について≫

 昨年・一昨年と、大量の採点ミスが発覚し(それ以前は追跡調査不可能)、採点・点検方法を変えて臨んだ今年の入学者選抜実施の経過報告。

「採点・点検に当てる(ママ)日を1日延ばし4日間とし、(休校にして:筆者付記)学校総がかりで採点・点検を実施したことにより、期間内に採点・点検を終えることができた。」「都教委で示した記述式問題の採点基準の共通理解と受検生が記述した実際の解答とのすり合わせに相当な時間を要した。」などの報告とともに、学校現場から上がった声の報告があった。

 評価する声は、「期間が1日伸びた(ママ)こと、生徒を登校させないことで、業務に集中できた」「2系統(解答用紙とそのコピー)の採点・点検は、採点・点検の精度向上に効果的だった。」等。改善を求める声は、「2系統で採点・点検した結果、受検生の多い学校、進学重点校等、記述式問題が多い学校では予想以上に時間がかかった」「部分点の採点基準についての質問が都教委に集中し、回答待ちのため、採点・点検が滞ることがあった。」「採点を考えた出題方法等について検討してほしい」等。

 合否のボーダーライン15%の解答について点検した結果、採点ミスを発見できた事例があるとの補足説明があった。これについては、2系統でそれぞれに採点して、得点の小計・合計が同じだったのかと疑問を持った。

 この報告を受けて教育委員から2つの発言があった。一つは山口委員から、記述式問題の採点に長い時間を要することについて、「『採点を考えた出題方法等』というのではないが、問題の研究が必要ではないか」。もう一つは木村委員長から、「『採点を考えた出題方法等について検討してほしい』というのは本末転倒。記述式問題で能力を引き出すのが国際的な方向。この声には抵抗がある。」と。しかし、言いっぱなしで意見を深めることはなされなかった。

 この後、4月に都教委は全答案の20%を抽出し、答案の点検をするという。採点ミスが発生した一番の原因が、授業と並行しての採点であり、日数も短縮されたことにあったことは明らかであったにもかかわらず、これまでに都教委の反省の弁はなかった。そして今回もそれはなかった。そうした都教委の姿勢が問われなければならないと思う。


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