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国家と本気で闘うとはどういうことか?(特急たから)
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特急たから@福島です。

鉄道と旅と温泉を愛する心の放浪人・特急たからがお送りする不定期コラム、「鉄ちゃんのつぶや記」第34号です。

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【鉄ちゃんのつぶや記 第34号】国家と本気で闘うとはどういうことか?

 2007年もあと残りわずかになった。今年を象徴する漢字に「偽」が選ばれ、年金も食品も「美しい国」もみーんなデタラメだとわかって大騒ぎになった1年だったが、この年の瀬に来てメディアを賑わせているのが薬害肝炎問題である。薬害エイズ事件からやっとこさ10年経ったかどうかだというのに、また薬害。それも前回と同じ血液製剤である。厚生労働省と製薬業界には、10年おきに薬害を繰り返す慣行でもあるのだろうか。日本政府が歴史に学ばないのは今に始まったことではないが、それにしても過去の経験からここまで学習しない組織も珍しい。

 今回、薬害肝炎問題で国を提訴した原告たちはフィブリノゲン投与で肝炎に感染したとされる。フィブリノゲンというのは人間の血液に含まれる成分のひとつで、赤血球など他の成分がほとんど球形をしているのに対し、このフィブリノゲンだけは糸状をしている。実はなかなかの優れもので、血管の中を流れているときは凝固しないが、ひとたびケガをして出血すると糸状のフィブリノゲンが絡みあって凝固し、やがて傷口を完全に塞いで出血を止める。かすり傷程度なら放っておいても自然に血が止まる人体のメカニズムにはこんな秘密がある。

 フィブリノゲンが少ない人は、このメカニズムがうまく働かないから、フィブリノゲンを人工的に投与してやる必要があるのだが、その投与によって肝炎が引き起こされたようなのである。

 肝臓というのは、私たちが思っている以上に重要な臓器である。「かんじんかなめ」を漢字で書くとき、昔は「肝腎」かなめと書くことが多かったが、現在では「肝心」かなめと書くようになった。それだけ心疾患が現代人にとって重要な位置を占めるようになったことの表れだが、「じん」が腎から心へ変わっても肝だけはずっと変わらない。それにもかかわらず、肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるように自覚症状がないためか、あるいは悪くなってもその部分だけ切除すれば蘇生してくれると軽く考えられているのか、今ひとつ肝臓への関心は薄いように見える。だが、肝炎は放置すれば肝硬変に移行し、やがては死に至る。やはり今も昔も「かんじんかなめ」なのである。

 大阪高裁の和解勧告は、原告患者にだけなけなしの和解金を払い、それ以外の患者に対しては救済の道を閉ざすものだった。同じ薬害に苦しむ患者の「命の値段」に差をつけ、患者の中に差別と分断を持ち込む許し難い内容である。「同じ薬を投与され、同じ病気に苦しむ患者は同じように救済されるのが当然である」として、原告団は決然と和解勧告を拒否した。原告団はまた「原告だけを救済しようと考えているわけではない」と述べ、これまた当然にも患者全体の救済を目指した裁判闘争であることを強調した。何名かの原告が和解勧告への怒りと悲しみを表明したが、なかでも27歳の福田衣里子さんの言葉に、私は引きつけられた。「…人の命に平然と差をつける、それが政府であるということが恐ろしい。私たちを見くびらないでほしい」。

 「私たちを見くびらないでほしい」…この言葉を聞いて、私は久しぶりに魂を揺さぶられた。こんな気持ちになったのはいつ以来だろう。おそらくは、藤保美年子さんの「私たちの人生を勝手に決めないでください」以来だと思う。いつしか私はテレビ画面に釘付けになっていた。その時の彼女の表情には、残った命の全てを闘いに懸けることを決意した者だけが持ち得る、ある種の凄味すら感じさせた。巨大な敵と闘うには、凄味を感じさせる運動でなければならないのだということを、改めて思い知らされた。

 翻って国鉄闘争である。分割民営化から20年目の今年は確かに大きな節目であり、長く続く苦しい闘いを節目の年に解決したいという関係者の思いは私もよく理解できる。だが、薬害肝炎でのこの政府の対応を見てほしい。フィブリノゲン投与と肝炎との因果関係を示す証拠が見つかっている薬害肝炎問題ですら、政府は和解金を1円でも値切り、患者に分断を仕掛けて切り崩そうとする卑劣な対応に終始している。ましてや、自分たちのやったことが悪いとも思っていない1047名問題で、政府がみずから進んで原告団に施しをするなどあり得ないのである。

 今回、薬害肝炎原告団に対するこの卑劣な対応を見て、私は確信を持った。国鉄闘争に関して政府が考えている解決水準は今なお「ゼロプラスアルファ」であることは間違いないと思う。国鉄闘争は21年目に越年するが、新たな年、2008年は全動労訴訟、鉄道運輸機構訴訟の判決が出る。3月頃には、年金問題で政府の約束違反を追及する世論が強まって参議院での法案審議が立ちゆかなくなり、政府・自公与党は
解散に追い込まれ、そしておそらく半世紀続いた自民党政権が崩壊する歴史的な年になるだろう。

 そして原告団の真価が問われるときがやってくる。その時のために、原告団は1歩2歩、いや10歩でも20歩でも前に出て、若い福田さんがブラウン管を通じて見せたような凄味を敵に見せ付けなければならない。少なくとも、和解による解決を手にするのは、それからでも遅くないのではないだろうか。

 最後は多少、苦言めいた発言になってしまったが、国鉄闘争の行方を心配する支援者からの辛口のお歳暮だと思ってほしい。来年もまた「鉄ちゃんのつぶや記」は国鉄闘争、安全問題を中心に、できるだけいろいろなテーマを取り上げていきたいと思っている。

 では、少し早いけれど、皆さん、よいお年を。

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特急たから aichi200410@yahoo.co.jp

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